1932年の創業から続く、「人」への想い。時代に合わせた仕組みと変わらない組織哲学に迫る

  • 公開日:2026/9/2(水)
  • 文・編集/大木 一真  撮影/伊藤 圭

電話工事から始まり、ネットワーク、そしてシステムへ。技術の変化に合わせて事業のかたちを変え続けてきた、東証プライム上場の情報通信企業、都築電気株式会社。システムインテグレーション(SI)とネットワークインテグレーション(NI)の両領域を手がける、業界でも珍しい立ち位置の会社です。

同社では、人的資本経営の考え方が広がる以前から「人がすべて」の姿勢を貫いており、個人の採用や育成の先にある「チーム」までを視野に入れた組織開発、人事制度改革を進めています。IT人材の獲得競争が激しさを増すいま、同社ではその人の力をいかに引き出し、仕組み化してきたのでしょうか。

今回は、執行役員の阿部様、人事制度改革室長の石川様、そして総務部の皆さんに、都築電気の人と組織への向き合い方についてお話をうかがいました。

創業以来、人がサービスそのもの。個人の専門性を価値に変えるチームとは

—— 貴社では1932年の創業以来、事業のかたちを変えてこられました。その一方で、変わらずに受け継がれてきた「人」に対するお考えをお聞かせください。

阿部 様:当社は1932年に、電話交換機の設置工事や保守の会社として創業しました。機器という「物」を納めて終わりではなく、その後の安定稼働を人の手で支え続ける。止めてはいけない社会のインフラを「人」が支え続けるというビジネスモデルが、祖業からすでに確立していました。

その後もコンピュータの販売、ソフトウェアの開発、そしてシステムインテグレーション・ネットワークインテグレーションへと事業を広げてきましたが、お客様の現場に人が向き合い、信頼を積み重ねていく構図は変わっていません。そのため、「人がすべて」という考え方をずっと変わらず持ち続けてきました。

「電気」という社名から電子機器メーカーだと思われがちなのですが、当社はICTを核にしてお客様に対して最適な価値を提案・実装する企業です。だからこそ、差別化の源泉は結局、社員一人ひとりの知見や技術、人間性になります。「人がすべて」というスタンスは、単なる精神論ではなく、ビジネスモデルとしての必然性が込められています。

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—— 「チーム」に対するお考えをお聞かせください。

石川 様:当社が現在主に手掛けているシステムインテグレーションとネットワークインテグレーションは、一人で完結する案件がほとんどありません。システムやネットワークの構築は、お客様や案件ごとにチームを組み、一人ひとりの専門性を持ち寄ってお客様に価値を提供していく仕事です。

だからこそ、単純に優秀な人材を獲得すれば会社が伸びるかというと、そうではないと思っています。個人が持つ専門性やアイデアをかけ合わせ、お客様の価値や事業成果へと変えていく場が、「チーム」です。お客様に提供する価値を最大化するため、個人の力を最大限に生かすためにも、チームという場のあり方に会社として向き合う必要があると考えています。

健康経営もテレワークも原点は「人」。時代に合わせた投資の歩み

—— 2016年から健康増進の活動を始め、2017年にはテレワークに関する企業表彰を受けるなど、人とチームへの投資を早くから重ねてこられました。これまでどのように意思決定し、どのように取り組まれてきたのでしょうか。

阿部 様:根底にあるのは、会社を支えるのは人であり、その人の体と心の健康がすべての源泉だ、という考えです。健康増進の活動を始めた翌年の2017年には、健康経営宣言を発表し、当社の代表みずからが旗振り役となる体制でスタートしました。

当時、ITベンダーの典型的な課題である長時間労働が、当社の現場でも大きな負荷となっていました。そこから健診データの分析や働き方の見直しを重ね、過度な労働を着実に減らす取り組みを続けています。その結果、経済産業省が公表する「健康経営優良法人」には9年連続で認定され、上位500社として「ホワイト500」の認定も受けています。

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働く場所についても同様に取り組んできました。新型コロナウイルスが流行する前から、テレワークの環境を整えていました。社員全員に薄型・軽量のノートパソコンを配り、どこにいても社内ネットワークにつながる環境を構築しています。国内外の企業で出社回帰を進める動きが加速する中でも、当社の出社率はおよそ40%を維持しています。

当社は比較的歴史の長い会社ですが、新しい流れに乗り遅れずに取り入れてきた、という自負があります。事業のかたちを変え続けてきたのと同じように、人への投資のかたちも、時代に合わせて変えてきました。

組織の成功循環モデル、社訓、文化醸成を背景に進める人事制度改革

—— 2025年10月には、既存の人事部とは別に人事制度改革室を新設されました。どのような狙いがあるのでしょうか。

石川 様:長年、大きくは変えてこなかった人事制度に、いよいよ手を入れていくためです。あえて人事部の中に置かず、並列の組織として目に見える形で立ち上げたのは、本気で変えるという会社の意思表示でもあります。

私自身は、この役割に就くまで11年半、営業として現場に立ち続けてきました。制度は、つくること自体が目的ではなく、現場で働く一人ひとりの力になって初めて意味を持ちます。現場に近い目線で企画し、現場の声を聞きながら制度として形にしていくことを大切にしています。

ミッションとして掲げているのは、個の力を高め、強いチームを作ること。当社の代表も「強い個への成長が、強いチームを作る」と考えており、この考えを起点に制度改革を進めています。個人かチームか、という二択ではなく、個人の力を高めた先にこそ、強いチームが、そして強い会社があります。個人、チーム、そして会社と、地続きとして捉え、取り組みを進めているところです。

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—— 人事制度を改革していく上で、変わらずに大切にされている会社としての考え方をお聞かせください。

石川 様:まずひとつは、社訓の一つにも掲げられている「和以為貴(わをもってたっとしとなす)」です。いまは表立って掲げる機会こそ減りましたが、ひとりで完結する仕事がない事業だからこそ、人と人との関係性を重んじる考え方は、都築電気のDNAとして浸透していると感じます。

もう一つが、任せる文化の醸成です。制度改革では、以下の3つの力を軸に置いています。

①革新への挑戦:「強み」と「変化」の両立
②組織マネジメント:任せる文化の醸成
③人材マネジメント:組織的な人材育成・人材配置

特に要になるのが任せる文化だと考えています。現場に権限を委譲し、最終的な責任は持ちながら、メンバーの挑戦を支える。リーダーが抱え込まずに任せられる環境をつくることが、個の成長にもチームの成長にもつながっていくからです。

私たちは、「関係の質」が起点となり、「思考の質」や「行動の質」を高め、最終的に「結果の質」につながり、「関係の質」の向上につながっていくという、組織の成功循環モデル(Core Theory of Success)を大事にしています。逆に、結果の質だけを性急に求めると、関係がぎくしゃくして、かえって成果から遠ざかってしまう。だからこそ、遠回りに見えても、まず関係の質から高めていくという順番を大切にしています。

そうした意味で、当社の総務部は日々の会話がとても豊富で、関係の質がとても高いチームだと考えています。土台となる関係ができているからこそ、考え方や行動の変化も生まれやすい。こうした土台のあるチームが一つずつ増えていくことが、強い組織につながっていくと思っています。

働く場を支えるバックオフィスへの期待。モデルケースとなるチームを目指して

—— IT人材の不足やAIの進展など、業界が大きく変化するなかで、総務部というチームには、どのような役割を期待していますか。

阿部 様:技術や市場がどれだけ変わっても、働く社員一人ひとりの日々を支える部門の大切さは変わりません。総務部には、何かあったら「総務に相談しよう」と思ってもらい続けられるような組織であってほしいと思っています。困ったときに頼れる部門がある。そのこと自体が、全社の安心感につながるからです。

総務部自身も、決して初めから完成されたチームだったわけではありません。それでも、自分たちのチームのあり方に正面から向き合い、変わろうとしてきました。下支えの部門がチームとして力を高めていく姿は、社内にとっても意味のあることだと感じています。

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大木 様:私はこれまでオフィスづくりを始め、社員の働く場を支え、整える仕事を担当してきました。働く場が変わると、人の動きや会話が目に見えて変わってきます。その様子を、現場でずっと見てきました。

総務の仕事は、直接お客様と対面し、表に立つ仕事ではありませんが、オフィスや制度を通じて、すべての社員に関わることができる仕事です。だからこそ、支える側の私たち自身が良いチームであることにこだわりたいと思っています。

この数年、チームに向き合う時間を重ねるなかで、リーダーが変わればチームが変わる、という実感を持つようになりました。総務部が変わっていく姿を見て、「うちのチームでもやってみよう」とモデルケースのように社内から思ってもらえたら、これほど嬉しいことはありません。

個人とチームの成長を結びつける。AIと協働する時代、これからの組織づくり

—— これからの組織づくりの展望をお聞かせください。

石川 様:当社の中期経営計画「Trust & Challenge 2029」には、お客様、パートナー、そして共に働く仲間。これまで選ばれてきた信頼(Trust)の輪をさらに広げながら、企業価値向上への挑戦(Challenge)を加速する、という意味が込められています。3つある挑戦の柱のうち、「価値創出を加速する人材ポートフォリオへの転換」では、成果を最大化する人材・組織基盤をつくることを、事業の戦略と並ぶ経営のテーマとして位置づけました。

AI時代、AIを同僚として協働する働き方へ変わっていくなかで、人材の要件や育成、評価の仕組みも再設計していきます。私たちが進める人事制度の改革も、この計画に位置づけられた投資の一つです。制度を変えた結果として、一つひとつのチームが高まっていく。そこにつなげていきたいと考えています。

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阿部 様:会社としては、人材の成長とチームの成長を、結びつけて考えていくべきだと思っています。制度や働く場所を整えるだけではなくて、リーダーが自分の言葉で語り、メンバーと向き合い、チームを動かしていける組織をつくっていきたい。

チームの状態を可視化して、対話と行動につなげていく仕組みは、これからの組織づくりにおいても有効な選択肢だと考えています。人がすべての会社として、人の力をチームの力へ、そして事業の力へと変えていく挑戦を、これからも続けていきます。

※本記事の内容は取材当時(2026年8月)時点のものです。


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