インタビュー
横須賀市役所 民生局 地域支援部 窓口サービス課 個人番号カード係 山口 和真 氏
予約1ヶ月待ちを解消。役所らしさを一新した居心地の良い窓口
2026年8月に開設された横須賀市マイナンバーカードセンター。従来の「2窓口・予約1ヶ月待ち」という課題をいかに乗り越え、限られた空間の中で市民・職員双方にとって快適な環境を実現したのか。事業をご担当された横須賀市役所 民生局 地域支援部 窓口サービス課 個人番号カード係の山口和真氏にお話を伺いました。
新たなマイナンバーカードセンターを開設された経緯と、目指されたコンセプトについてお教えください。
短時間の手続きでも、快適さをないがしろにしない
マイナンバーカードの普及に伴い、交付だけでなく電子証明書の更新需要が高まったことが最大の理由です。従来の拠点は2窓口しかなく、予約が1ヶ月先まで埋まる状況が続いていました。今後さらなる窓口利用者の増加が見込まれる中、「需要に対して受付体制が不足している」という危機感から、窓口数を約3.5倍の7つへ拡張した専門センターの開設を決断しました。
開設にあたっては「役所らしくない、おしゃれで居心地の良い空間」を意識しました。手続きや待合で少なからず待ち時間が発生してしまう中で、殺風景な空間だと市民の皆様にストレスやフラストレーションが溜まりやすくなります。それは現場で働く職員にとっても同様です。
マイナンバー関連の手続き自体は、10分〜15分程度で終わる短いものです。しかし、「短時間の手続きだから空間的な快適さはないがしろでいい」とは思いません。せっかく専門センターを作るのであれば、その短時間でもストレスなく快適に手続きをしていただきたいという想いがありました。
既存施設を活用されたことで、低い天井高や浅い奥行きといった空間の制約があったかと思います。窓口の設置において配慮された点は何ですか?
圧迫感のない「抜け感」と、将来へ向けた「可変性」
施設の顔である入口のサインは、あえて夜景や商業施設のネオンをイメージしたデザインにし、壁紙やサインも横須賀らしいネイビーブルーを基調としました。一歩足を踏み入れた瞬間から「役所らしくない」落ち着いた世界観を感じていただけるよう工夫しています。
また、マイナンバーカードの窓口では暗証番号の入力などを行うため、プライバシー保護の観点から背面の仕切りパネルを設置したいと考えていました。しかし、低い天井で狭い空間にパネルを立てると、来庁された市民の方にも働く職員にとっても圧迫感が出てしまうのが懸念でした。今回導入したカウンター「VaMoS<バモス>」は、プライバシーをしっかり守りながらも絶妙な「抜け感(透け感)」があり、空間全体の圧迫感を解消してくれました。
什器選定では「可変性」も重視しました。今後、行政手続きのデジタル化や窓口のあり方が変化していく中で、「ここだけでしか使えないもの」は避けたかったのです。将来的に窓口が縮小したり移設したりした際にも、別の用途に転用できる柔軟さは非常に魅力的でした。
さらに、個人情報の保護として導入した「サウンドマスキング」も、待合側へ会話が漏れるのを防ぐだけでなく、心地よい背景音となることで職員にとってもリラックスして対話に集中できる環境をつくってくれています。
運用面での工夫と、オープンから1ヶ月が経過しての反響はいかがでしょうか?
開庁1ヶ月で来庁者が約2倍へ
カードの受け取りは予約制を維持しつつ、更新や暗証番号再設定など、市民が必要なタイミングで突発的に発生する手続きは「予約不要(即日対応)」に切り替えました。窓口を増やした効果もあり、開庁1ヶ月目の8月だけで、従来の約2倍の市民の皆様にご利用いただくことができました。
市民の方々へのヒアリングやホームページに届くメッセージでも、「綺麗な施設で落ち着く」「予約制でなくなったことで利便性が向上した」「安心して手続きできる」といった嬉しいお声を多数いただいています。
窓口だけでなく、バックオフィスや「休憩室」を別室として整備された効果についても教えてください。
職員のモチベーション向上
窓口とバックオフィスを分けたことで、職員が緊張感から解放され、適度にリラックスして仕事ができるようになりました。
また、横須賀市として初めて独立した「個室の休憩室」を設けたのですが、これが非常に職員に好評です。みんなで机を囲んで楽しそうに昼食を取ったり、休憩しており、メリハリをつけて心身をリフレッシュできることで、職員のモチベーション向上や業務への集中に繋がっていると感じています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
リアル窓口の需要はなくならない
今後さらに行政DXが推進されていきますが、高齢者の方々をはじめ「窓口で職員と対面で相談しながら手続きしたい」という需要は少なからずありますし、今後もなくなることはありません。だからこそ、窓口は単なる作業場ではなく、市民の皆様が安心して相談できる場所であるべきです。
今回、短時間の手続きであってもストレスのない快適な空間づくりを実現できました。今後も運用の変化に対応できる柔軟性を持ちながら、市民の皆様に満足していただける行政サービスを提供していきたいと考えています。
横須賀市役所 民生局 地域支援部 窓口サービス課 個人番号カード係のみなさん
コクヨ担当者
カード交付10年目の更新ラッシュは、全国の自治体が直面する共通の課題です。今回のプロジェクトでは、限られた空間の中でも実務動線を意識したレイアウトにより、使いやすさと分かりやすさを徹底的に追求しました。また、計画から実施までを短期間で完了できたことも大きなポイントです。
行政手続きのデジタル化やセルフ化が進む中で、これからの窓口には運用の変化に柔軟に対応できる「可変性」が欠かせません。さらに重要なのは、「DXが進むからこそ、リアルの窓口は丁寧な相談やケアを提供する場所へと進化する」という視点です。
短時間の手続きであっても快適さを諦めず、市民の安心感と職員の働きやすさを両立させる空間設計。コクヨは、変化し続ける行政ニーズに対応し、持続可能で質の高い窓口空間づくりをこれからもサポートしていきます。
コクヨ
鋸谷 省吾
コクヨ
八上 俊宏
コクヨマーケティング
中川凪