インタビュー
つくば市 市民部 市民窓口課 課長補佐 大山 孝 氏
市民課の窓口を改修するに至った経緯をお聞かせください。
背景として当市は、1987年の市政施行以来一貫して人口が増加しており、2010年に新庁舎が開庁してからも、窓口は慢性的に混雑しています。増え続ける来庁者への対応に追われる中で、新庁舎開庁時に整備されたレイアウトでは迅速・丁寧な窓口対応が十分にできなくなってきており、来庁者の方々の快適性や利便性の向上はもちろんのこと、職員にとっても心理的安全性の高い職場環境を整備することが重要であると感じていました。ちょうどその頃、デジタル庁による自治体窓口DX推進に向けた「窓口DXSaaS」を全庁的に導入することとなり、これにあわせて市民窓口課のベテラン職員と若手職員からなる「窓口改革ワーキング」を立ち上げました。このワーキンググループにおいて、窓口業務の改善とレイアウトの見直しについて、議論を重ねてきた結果が今回の改修へと繋がっています。
具体的にはどのように改修されましたか?
組織変更や非常時にも迅速に対応できる「可動式カウンター」と、来庁者へ配慮した空間づくり
具体的な改修内容としては、窓口のカウンターを大きく見直しました。従来の固定式のカウンターではなく、片側にキャスターが付いており移動が可能なカウンターテーブル「VaMoS<バモス>」を導入しました。これにより、繁忙期や業務の再編時、また万が一の非常時などにおいても、機動性の高いカウンターテーブルであれば迅速に対応できると考えています。新庁舎開庁時に整備したカウンターは長い固定式だったため、組織変更や業務の再編の際には解体・組み立てが発生し大変苦労しました。その点、今回のカウンターテーブルには大きなメリットを感じています。一方で、現状では証明発行や支払いの業務がまだ多く、ハイカウンターが不足していました。そのため、来庁者の滞在時間を短縮し、迅速な対応を可能にするため、1人用間口のハイカウンターの数を増やしました。
カウンター前の来庁者用の椅子については、コンパクトなひじ掛け付きのデザインで、高齢者の方にも立ち座りがしやすいものを選定し、さらに背もたれと座面のカバーが交換できる、メンテナンスしやすいものを新たに設置しています。また、待合スペースの椅子につきましては、来庁者の方々を案内しやすいよう、業務内容ごとに色分けを行いました。以前使用していたベンチタイプのものではなく、1席ずつセパレートになったタイプに変更しています。
窓口ごとに色分けされたロビーチェアー
職員の移動距離を短縮し、作業効率を上げる3線式レイアウト
職員用執務室側のレイアウトは、窓口DXSaaSを利用した住民異動手続きの本格的な稼働を見据えて、新たに3線式を採用しました。具体的には、1線目のカウンターで受付を行い、そのカウンターと並行に配置した2線目のテーブルで入力作業や異動処理を行います。そして、3線目で最終的な審査を行うという流れです。証明書の発行業務は、令和8年3月に窓口DXSaaSを先行導入していますが最終的に審査テーブルに各種証明書を集約し、交付窓口にて交付する形にしています。このレイアウトにより、職員は移動することなく、カウンターでの受付対応、2列目での入力・異動処理、そして3列目での審査処理に集中できるようになり、事務作業効率が大幅に向上すると考えています。また、申請書が今どのテーブルにあるかを確認するだけで、作業工程が一目瞭然となるのも大きな利点です。実際に申請書の移動距離を業務別に測定したところ、改修前のレイアウトで行うよりも約半分の距離となり、これにより処理スピードが上がり、市民の方々の待ち時間短縮、そして「待たない窓口」の推進に繋がるものと期待しています。
受付→入力→審査の3線式レイアウトを導入したバックオフィス
可動式のカウンターテーブル「VaMoS<バモス」やレイアウト変更・移動が容易なロビーチェアー「SOLOS<ソロス>」は将来の用途変更も見据えた『フェーズフリー*』の考え方を取り入れた製品ですが、この『フェーズフリー』の考え方については、どのように思われていますか?
『フェーズフリー』の考え方について、非常に重要であると考えております。現在、自治体を取り巻く環境は、人口動態の変化だけでなく、国が主導するDX(「行かない窓口」や「書かない窓口」といった施策)の推進など、これまでにないスピードで激しく変化しています。このような状況では、5年後、10年後に市民窓口課の窓口がどれくらいの規模で、どのような機能を持っているかを正確に予測することは非常に困難です。
そのような予測不可能な時代において、従来の「動かせない固定式の窓口」を作ってしまうことは、将来的にリスクになり得ると感じておりました。だからこそ、今回の改修では、「その時々の最適なレイアウトや用途に柔軟に変更できる空間」を作っておくことが非常に重要であると改めて気づかされました。
例えば、現在メインの窓口カウンターとして使用しているテーブルですが、将来的にDXが進み窓口業務が縮小した際にも、トップシェルフや幕板を外すことで、市民向けの相談デスクや、職員の会議用テーブルとして転用できる設計になっています。これにより、設備が無駄になることなく、長く使い続けられる点は、私どもにとって大きなメリットであると考えています。
*フェーズフリー:『フェーズフリー』のフェーズとは日常時や非常時、将来といったさまざまな局面のことを指し、そこからフリー=自由である、ということで、どのような局面であっても変わらず使い続けることができるように整備する考え方を指します。
窓口DXSaaSを利用した本格的な稼働はこれからとのことですが、改修を終えてみて市民のみなさまや職員の方々からの反応、たとえば働きやすさやコミュニケーションの変化などについてはいかがですか?
実際に来庁された方からは、隣の窓口や周囲の視線が気にならないので、安心して手続きができたという声や、従来の3人掛けから1人掛けになったことで、他の来庁者に気兼ねなく座れるようになり、待ち時間のストレスが減ったとの声がありました。どんな空間やレイアウト、利用シーンでも組合せて使いやすいソファを選定したので、今後予想される将来の窓口の変化にも配慮されています。また、色分けされた座席は、どこに行けば良いか分かりやすいというお声をいただいていますし、全体的な雰囲気も明るくてきれいになったとの声もあります。
職員側からの反応としては、以前は手続き案内中に周囲の声で来庁者とのやりとりに聞こえにくさを感じることがありましたが、プライバシーに配慮した空間になり安心感があると意見や、職員同士の作業状況が確認しやすくなりコミュニケーションがとりやすくなった、などの意見がありました。職員の動線を十分に確保するためには、もっと広い作業スペースがあればよかったとも感じていますが、可変性・汎用性が高い什器を選定していますので、業務フローや体制の変更に合わせてハード面を変えることへの抵抗が少なく、今後試行的な取組みやレイアウト変更を行う場合にも速やかに対応していけそうです。
また、3線式のレイアウトは作業効率が向上し、以前のように申請書を探して移動する手間が減り、自分の持ち場で集中して業務に取り組めるようになることで、精神的な負担も軽減されそうです。これは働きやすさの向上に直結していると考えています。今回の改修は、市民のみなさまの利便性向上と、職員の働きがい、そして業務効率の向上に大きく貢献するものと感じています。
市民部 市民窓口課 大山 氏
最後にこれからの窓口についてのお考えをお聞かせください。
市民サービスの向上のため、窓口はこれからもよりよいものに進化させていく必要があります。窓口BPRと窓口DXSaaSの導入を機にレイアウトの再設計を行ったことは、自分たちの窓口業務を見直す良いきっかけとなりました。市民のみなさまのさらなる利便性の向上と、将来の窓口を担う職員の働きやすさを両立させるというコンセプトのもと、今回の可変性を持たせた窓口空間の整備は、将来の展望を見据えた第一歩だと考えています。窓口改革には終わりはありません。今後もますます加速する変化に迅速に対応し、さらなるサービス向上と職員の働きやすさの向上に取り組んで行きます。
コクヨ担当者
今回の改修は単に現状の課題解決を図るだけでなく、将来の窓口のあり方を見据えて変化にも対応できるレイアウトを構築しなければならない業務でした。つくば市様では窓口DXSaaSの導入が決まっていたものの、現状の窓口から一足飛びに変化するわけではなく、まずは証明発行業務からスモールスタートする段階的な変化に対応できる窓口整備がポイントとなりました。窓口空間はカウンターテーブル「VaMoS<バモス>」やロビーチェアー「SOLOS<ソロス>」といった「いつも・もしも・これからも」、どんな局面でも変わらず使い続けられるフェーズフリー認定品を中心に計画し、窓口改革を主体的に進める職員のみなさまと何度もプランを練り上げながら、将来変化にも対応できる窓口空間を整備しました。
DXの進展に伴う窓口の改修はまだ始まったばかり。コクヨグループは今後もDX時代の新しい庁舎空間の実現に向けて、しっかりと伴走支援させていただきます。
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八上 俊宏