リサーチ

2020.06.22

令和時代の介護は20~30代からスタート!?

介護問題を抱えるビジネスパーソンは急速に増加・若年化の傾向も

親が高齢となり、仕事と介護の両立に悩み始めるのは、「管理職世代あたりから」という印象を持たれることが多い。しかし、2019年7月に株式会社リクシスが発表した『ビジネスパーソン2500人を対象とした仕事と介護の両立に関する分析レポート』によると、20代~30代の若年層にも介護に直面している人が一定数存在することがわかった。

仕事と介護の両立によって発生する問題は、親世代が70代~80代以上となる50代ビジネスパーソンを中心とした「介護離職問題」を中心に語られてきた。近年は平均寿命が延び、健康に長生きをする人が増えたので、50代での介護スタートにも「早い」という印象を持つ人がいるかもしれない。
しかし、『ビジネスパーソン2500人を対象とした仕事と介護の両立をめぐる分析レポート』を見ると、20代~30代という年齢で介護が始まっている人もいる。また、ピークは50代や60代ではなく、40代である。介護は決して「まだまだ先のこと」ではなく、幅広い年齢層のビジネスパーソンが対象になり得るのだ。
 
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調査では、介護未経験者の7割以上が、介護が始まったら「仕事を続けられない・続けられるかわからない」と答えている。現代では、親と離れて暮らしており、日常的な介護を託せる兄弟姉妹がいない人も多い。親の近くに住んでいる、または要介護となった場合に親を呼び寄せるとしても、協力体制を築ける親族が身近におらず、一人や一家族で介護のすべての負担するケースも少なくない。50~60代よりも40代に介護中のビジネスパーソンが多いという結果の背景には、おそらく兄弟姉妹の有無も関係しているのだろう。そして、今後もその傾向は継続するか、ますます深刻になっていくと推察される。
 
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一方で、介護が始まったときに「できるだけ通常通り働き続けたい」と希望しているビジネスパーソンは7割以上。これは、介護に不安を感じている割合とほぼ同じである。
働き方については、「介護休暇・時短勤務を利用し、できるだけ通常通り働き続けたい」が最多。2位は「休業制度利用後に仕事復帰したい」となっているが、介護には「終わりの時期が明確ではない」という特性がある。特に要介護者のほかにも扶養家族がいる場合は、長期間にわたって休暇を取り続けることは難しい。たとえ収入が下がっても、介護と両立できる仕事に転職しなければならないケースもあるだろう。「今まで通りの働き方で対応したい」が17%に留まっているのは、視点をかえると「今まで通りの働き方では仕事と介護を両立できない」と考える人が、8割以上いるということだ。
 
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近年は少子化に加えて高齢出産も増加しているため、若いうちに親が高齢を迎え、要介護となるケースも増えていくと予測される。また、ひとり親家庭の増加も、介護者若年化の一因となっているようだ。祖父母が倒れた場合に、働き手であるひとり親は仕事を減らすことができず、子が介護を担うケースがあるという。
少子高齢化による大介護時代の到来は以前から予測されていたが、若年化の予兆も見逃すことはできない。20~30代という年齢は成長のための大切な時期なのだ。この段階で仕事と介護の両立に直面すると、思うように仕事に邁進することができず、望む未来を諦めざるを得ない若者が出てくるかもしれない。
40~50代の働きざかりの貴重な人材を介護によって手離さないためにも、若者が仕事と介護を両立しながらビジネスパーソンとして確かな礎を築けるようにするためにも、働き方改革は必須課題だ。介護休暇取得の推進、時短勤務やフレックスタイム制、テレワークの導入もその一つであるが、働く時間と場所を自由に選べるABWのような、より自由度の高い働き方が浸透すると、ますます仕事と介護の両立がしやすくなるだろう。また、制度設計はもちろんのこと、早い段階から幅広い層に対して働きかけを行い、介護への理解を広めることが望ましい。企業ぐるみ、社会ぐるみで仕事と介護の両立に向き合い、当事者と寄り添っていくことが大切なのではないだろうか。
 
 
 
作成/MANA-Biz編集部