
例年、連休明けに人事担当や現場リーダーを悩ませるのが若手の退職。その早期離職を「やる気がないからだ」と片付けるのは早計かもしれません。近年、その離職理由に変化が見られており、辞めてほしくない優秀な人材もその理由で会社を去っていく傾向が見られています。問題は「若手が辞めやすくなったこと」ではなく、「組織が選ばれる基準が変わったこと」にあるのかもしれません。受け入れ側に何が求められているのか、考えていきます。
例年連休明けから梅雨ごろにかけて、新人を含めた若手からの退職連絡が多くなる傾向が見られます。連休明けのオフィスに退職代行業者から連絡が何度もある企業は少なくないようです。
ただ、近年若手が辞めやすくなっているというわけではありません。「Z世代は我慢ができなくなっている」などの誤解があるようですが、実は大卒の3年以内離職者はほぼ3割台、1年目の離職者は12%前後で推移していて、ここ30年の傾向に変化は見られていません。
(厚生労働省:「新規学卒就職者の離職状況」より)
厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」によると、初めて勤務した会社の退職理由として最も多かったのが「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」28.5%、次いで「人間関係がよくなかった」26.4%、「賃金の条件がよくなかった」21.8%、「仕事が自分に合わない」21.7%の順でした。
また、初めて勤務した会社での勤続期間別にみると、1年未満に辞めた人の退職理由として「人間関係がよくなかった」と回答した割合が最も高い(52.3%)ことがわかりました。つまり、若手でも新卒の場合は、賃金や労働時間などの条件よりも人間関係に対する不満の方が早期離職につながりやすいということがわかります。
入社3年以内に約3割の若手が離職する傾向は変わっていませんが、実は企業に与えるインパクトは以前より大きくなっています。これまでは新卒の人口が多かったため、一定数辞めてもすぐに補填することができました。しかし現在は、少子高齢化で生産年齢人口(15〜64歳)は1995年の約8,700万人をピークに現在は7,400万人台まで減少、2050年には5,275万人まで減少すると推計されています。つまり、「空いたポジションが埋まらない」リスクに直結する可能性が年々高まっているのです。
(総務省:令和4年版地方財政白書「高齢化の推移と将来推計」より)
また、近年は優秀な人材が職場で「自分の力を活かせていない」「自己成長につながらない」と感じると、早々に見切りをつける傾向が強いという話をよく耳にします。ここ数年の売り手市場傾向で選択肢が増えていることもあってか、より良い条件を求めて転職する意思を固めるまでのスピードが早まっているようです。
実際、厚生労働省の調査結果から、転職者のうち前職より給料があがった人の割合は、減少した人の割合より多いことがわかります。このデータは若手に限りませんが、転職の結果、より待遇の良い会社に移れた人が増えているといえます。
専門性志向が強い高スキル層など辞めてほしくない人が離職することは、企業にとってこれまで以上に痛手が大きくなります。若手の離職に向き合い、できる対応をしていかなければ経営リスクにつながりかねません。

(厚生労働省:転職入職者の賃金変動状況別割合の推移)
また、若手が仕事や職場に求めるものも変化しつつあります。具体的には、貢献意欲と成長意欲が強く、即戦力と認められたい欲求が強いといわれています。つまり「労働時間やサービス残業が長い」などの労働条件よりも、「成長できるイメージが持てない」ことの方が退職の動機になり得る傾向が指摘されているのです。
タイパ意識の高さから、専門性が身に着き人材としての市場価値を高められる職場でないと判断すれば早々に見切りをつけ、終身雇用が期待できずいつか転職する必要があるなら、自身でキャリアを構築できそうな会社に移る選択をしている可能性もあります。
また、離職理由につながりやすい人間関係の課題と心理的安全性は切り離せないものですが、若手が求める心理的安全性に対する認識に誤解がある場合も。例えば関係性の悪化を恐れるあまり間違いを指摘しない、負荷の大きい作業をさせないといった対応は、心理的安全性のあるチームとはいえません。若手が職場に求める心理的安全性とは、「優しくしてほしい」「負担を減らしてほしい」ではないはずです。求められているのはチームの目標達成のための健全な議論に参加できることであり、その経験を通じて貢献や成長を感じられることなのです。
また、受け入れ側が「新人=未熟」と決めつけ、即戦力になるには数年かかる前提で研修プログラムを組んだり、発言や挑戦の機会を与えないケースもあるようです。
例えば入社後の受け入れプロセス(オンボーディング)で「自分の居場所がない」「居心地が悪い」と感じたり、研修期間が終わってOJTに移行したタイミングで「放置されている」と感じた場合、「丁寧に教えてもらえる期間が終わった途端に孤立した」「教えてもらえないから成長できない」と感じて、退職を決めてしまうのかもしれません。
若手に関心を寄せ、ニーズとのアンマッチや認識のズレがないかを正しく認識し、受け入れ側のチームで対応できることが何かを考えることが求められています。
若手の離職理由のうち、受け入れ側のチームでは休日日数や勤務開始時間、給与などは変えられませんが、人間関係の課題は変えられます。若手という新しい「木」が育つための土壌としてチーム側の組織風土を見直し、必要に応じて改善することも離職防止の非常に重要な観点です。
では、若手にとって「ずっとここに居たい」と感じられる職場、つまりコミットメントがある組織とはどういうチームなのか。従業員のコミットメントとウェルビーイングの関係性を整理した論文「Employee commitment and well-being」にそのヒントがあります。
※コミットメント:従業員と企業を結び付ける力
※「Employee commitment and well-being」John P. Meyer, Elyse R. Maltin
マイヤー氏、マルティン氏は有名な「コミットメントの3要素モデル」(Meyer & Allen)を用いて、コミットメントとウェルビーイングとの関係を分析。その結果、3種類あるコミットメントのうち、情緒的コミットメント(「愛着」がある)が最もポジティブでストレス耐性が高いことがわかっています。
一方、存続的コミットメント(去ると損をするという「打算」)や規範的コミットメント(いるべきだという「義務」)が強いと、ウェルビーイングにネガティブな影響がある場合もあります。例えば存続的コミットメントが強く、損得勘定で会社にいる場合は心理的負担が高く、よりよい条件の会社が見つかれば転職を考える可能性があります。規範的コミットメントが強く、義務感や組織から受けた投資への返礼感情で会社にいる場合は、仕事に対しても会社に対しても受け身で消極的な姿勢になるケースも多いようです。
情緒的コミットメントを育むためには、自分の仕事を自分でコントロールできているという「自律性」や、自分のスキルを発揮して成果を出せていると感じられる「有能感」のほか、職場に信頼できる仲間がいて組織の一員として受け入れられているという「関係性」の3つが満たされることが効果的だといいます。まさに、若手の働きがいと情緒的コミットメントを高める要素が一致していることがわかります。
逆に、「質問しづらい」「フィードバックがもらえない」「雑談がない」といった軽微な断絶が積み重なると、心理的な距離につながってしまいます。
チーム側が若手の情緒的コミットメントを育むためにできることとして、もっとも重要なのが「関係性」です。自律性や有能感も重要ですが、単独では機能しません。挑戦の機会やフィードバックの提供などは、それを支える信頼関係があって初めて成立するからです。
この関係性の構築において、最も影響力を持つのが直属の上司・チームリーダーです。若手が「この職場なら成長できる」「ここに居たい」と感じられるには、リーダーを起点にチームの関係性をどう築くかが重要だといえます。
しかし、「少し背伸びをした挑戦の機会を与える」「その経験を通して見えた強みやスキルをフィードバックする」など、自律性や有能感を高めるための仕事の与え方や研修は思いつきやすくても、関係性を満たすためのアプローチとして何をすべきかは思い浮かびにくいもの。それには関係性が見えない資産であるため、現状や課題を把握することが難しいことが影響しています。課題を認識できないまま、離職という形で初めて問題に気づくことになってしまうケースも多いようです。
メンバーそれぞれが関係性についてどう感じているのか認識をすり合わせるには、チームの現状を客観的に把握することが必要です。
コクヨの組織成長ソリューション「TEAMUS」は、現在のチームの関係性の質を測り、対話を通じてより良い方向に向かえる支援を行っています。
私たちは、チームの関係性を「チームの目的に共感してメンバーと一体となって取り組める関係性」「メンバーに誠実に接し、相互成長し合える関係性」「チームの新たな姿や可能性を共に描ける関係性」といった観点で可視化。そこで見えてきた伸びしろや強みについて、対話を通してチーム内で共有し、高めていくことができます。そのプロセスを通して、若手も自分がチームの一員であることを自覚し、チームの目標達成のために貢献していく未来を描けるようになっていくはずです。
「TEAMUS」に関するくわしい内容は資料でご紹介しています。若手の離職に悩まれている方は、ぜひ参考としてご覧ください。

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