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Timeless Placeness

時間を忘れて没頭する。場所がもたらす触発の心地よさとともに。ニューノーマル時代を迎えた今、働く場所の意義が見直されています。私たちSAIBIが模索するのは、単なる作業場ではなく、集う人々や空間が互いに影響を与え、共鳴し、新たな価値を生むワークスペースのあり方。仕事における「時間と場所」の意義を、私たちはオフィス家具ブランドの立場から問い直します。あるべき姿は、人々が時間を忘れて没頭できる空間であること。空間が、没入を促す装置になると同時に、ひとりひとりの感性を刺激し、冴え冴えとした個性が発露するアトモスフィアを有すること。場を支えるのは、人に最も近いところにあるオフィス家具です。こだわり抜かれた上質な素材と造形美、所作の美しさを生み出す体験設計。空間の場所性を定義する家具にこそ、具現化可能なワークスペースがあるはずです。そうして使い手となる人々の感性を刺激し、豊かな創造性を引き出す。時間の質を上げる。それが私たちSAIBIの使命です。

The Future of  SAIBI

人が働く環境は、社会の変化と密接な連関をもって変わり続けています。

仕事の効率のみならず、ワーカーの働きやすさや快適性に意識を向けた「ニューオフィス」の概念が登場したのは1980年代。ボックス型コンピューターやFAXなどの電子機器がオフィスに導入され、それらが発する動作音や熱が仕事の快適性を妨げないようパーティションを配置するなど、オフィスレイアウトの多様化が進みました。続く1990年代は、オフィスの快適性がより一層求められた時代。人間工学に基づいた「座りやすい」オフィスチェアーの導入が始まるほか、通信技術の発展によってモバイル端末の利用が進み、場所を選ばず仕事をすることが可能に。固定席を持たないフリーアドレスオフィスの登場もこの頃です。

SAIBIが生まれたのは2014年。Apple製品を筆頭に近未来的なガジェットが注目されるのと並行して、ワークスタイルに関するパラダイムシフトが起きた時期です。SAIBIが着目したのは、マネージャーが個室からチームメンバーを監視する外資系企業ならではの組織型ワークスタイルから、マネージャーも含めてオープンなスペースでともに働き、コミュニケーションを活性化させるスタイルへと舵を切ろうとする企業のニーズでした。こうしたマインドセットを実装する一助として、オフィス家具メーカーであるKOKUYOは、新ブランドSAIBIを発足。同時にSAIBIが描く新しい時代のワークスペースを体現するものとして、今なお広く親しまれるデザインコンセプト、SAIBI(NEO CHIC)を発表しました。

「新たな洗練」を意味するこのムードの鍵を握るのは、プロダクト誕生当時、デザイン業界のメインストリームを担ったiPhoneなどの近代的なツールが有する先進性、タイムレスな上質さ、身体知覚へのほど良い刺激、浮遊感。これらの空気感を纏い、これまで企業の重役に割り振られた閉鎖的な個室空間に代わって、オープンながらもラグジュアリーなパーソナル空間を実現する、プロフェッショナル向けのオフィス家具として設計いたしました。現在まで、外資系を中心とする上質かつ機能性の高い空間を求める企業のオフィスで数多く導入いただいています。続く2016年に登場したSAIBI-TX(TEXTURED MODERN)は、SAIBI(NEO CHIC)で描いた「新たな洗練」を下地とし、無機質さに傾倒しがちなモダンなムードに対して、人間の五感を刺激する質感を取り込んだ「新たなモダンプロダクト」として構想いたしました。潔さ、ノイズレス、ミニマルを軸に据え、素材が本来的に有する質感を豊かに感じさせるデザイン思想を具現化した、ワーカーにとって必要十分な環境かつ安心感をもって思索に没頭できる環境を提供するラインです。以来8年の期間を空け、2024年、SAIBI-LX (RESONANT LUXE)が誕生しました。

この間、新型コロナウイルスによる未曾有の事態によって、私たちは働き方だけではなく「どこで/どのように生きていくか?」を再考することになります。出勤からテレワークやオンラインミーティングへの切り替え、住まいを都市から郊外へと移すなど「ニューノーマル」と呼ばれる新たな生活様式や働き方など、自らの意思とは関係なく、既存路線からの改変を求められた記憶は未だ風化していません。

こうした時代の空気感を捉えて誕生したSAIBI-LX(RESONANT LUXE)は、これまでのSAIBIが展開したふたつのプロダクトラインとは一線を画する空間のアトモスフィアを提案しています。SAIBI(NEO CHIC)、SAIBI-TX (TEXTURED MODERN)でフォーカスしたストイックな要素から、心地よい温かみや落ち着きをベースとする深い思考をもたらす方向性へと舵を切ったのです。これは競争を求められる都市の労働における緊張感と、自然がもたらす解放的な安寧を両立させるムードであり、右肩上がりに成長を求め続けてきた社会の空気感がゆるやかに切り替わったことに関係します。人々の求めるものが変われば、人を起点とするワークスペースも変わる。ならばワークスペースにおける重要なエレメント、オフィス家具も自ずと変化していきます。

さてこれまでに触れてきたSAIBIのプロダクトラインの底流には、日本的な慮りが存在します。機能を追加して満足感を高める「おもてなし」ではなく、ワーカーにとってのネガティブな要素を最小限化することで実現する「日本的なホスピタリティ」として、あらゆる面にこの意識が反映されています。以下、機能美の実装と細部にまでこだわるクラフトマンシップ、それに至る議論や考え方を簡単にご紹介いたします。

SAIBIの考える機能美は、使用者に必要な行為を自然で美しい所作で行うことを目指しています。例えば配線カバーひとつとっても、開閉音を軽減した設計であること、開閉の動きがスムースであること、そしてメンテナンスをしやすいスペース感であることなどさまざまな配慮を凝らしています。配線カバーひとつに対して大げさだと思われるかもしれませんが、働く間、断続的に触れるパーツです。パソコンやITツールのコンセントの挿入から取り外しにおいて、無理なく手が届く距離の設定やどの着座位置からもアクセスができるなど、ワーカーのフラストレーションをできる限り取り除く。これは仕事に対する集中を妨げない、実利かつ美しい機能性を有することの証明でもあります。

機能美のほか、日本的な慮りとしてのクラフトマンシップ意識もSAIBIに内在します。留め具のビスは代表例のひとつです。見える範囲をきれいに整えることを当然とし、背面部や開口部の奥のビス留めまでひっかかりのない美しい仕上げを心がけました。かつての日本建築で多用された隠し釘の技法にも通じる工夫です。日常的に家具を使うワーカーでさえも気づかない要素を実装することは、製造的コストにもなりえますが、一方でこうした日本的な細やかな心遣いこそがプロダクト全体のクオリティや精神性を担保する必要なコストだと私たちは考えています。

結論すると、SAIBIは、ワーカーひとりひとりがアクティビティに集中し、よりよいアウトプットを生むためのムードとユーザビリティ、その双方に対して最適なホスピタリティを尽くすオフィス家具のあり方と言えます。その道理に立てば、SAIBIを企業が採用することもまた、ワーカーひとりひとりに対する企業からのホスピタリティの表れとなるはず。SAIBIは、プロダクトを通じてワーカーひとりひとりの感性に働きかけ、その感性がアウトプットに活きる、そんなブランドでありたいと考えています。そしてこれまでも、これからも、社会や個人に対してプロフェッショナルに働くみなさんを支えるオフィス家具として、時代の空気を読み取りながら人起点のワークスペースの進化に努めていきます。

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