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【イベントレポート】~AI時代の働き方をよむ~『WORK TREND REPORT 2026』発刊記念セミナー
公開日:2026.4. 1
執筆:コクヨコラム編集部

コクヨによる初めてのトレンドレポート『WORK TREND REPORT 2026』が刊行されました。これを記念して、書籍編集をしたコクヨ ワークスタイル研究所 山下正太郎と、株式会社黒鳥社 若林恵さんが登壇するイベントが開催されました。
国内外の膨大な情報ソースを分析した同レポートを紹介する第一部と、二人が対談した第二部の模様をお届けします。
(読了時間:約6分)
第一部のアーカイブ配信はこちら
第一部:働く場の未来を読み解く‐AIによって変化する7つの潮流
次の議論を始めるための地図
山下:こんにちは、コクヨの山下です。まずは私から『WORK TREND REPORT 2026』の内容を紹介いたします。
みなさんは「トレンドレポート」と呼ばれるものにどのくらい馴染みがあるでしょうか。トレンドレポートとは一般的に、「現状はこうである、だから今後はこんな変化がある」という未来予測を伝える報告書だと言われています。
しかし私自身は、予測が当たるかどうかはさほど重要ではないと思っています。それよりも、いま世の中で起こっている変化を知り、そこに対し自分たちはどんなアクションを取ればよいのかを考える。そんな、「次の議論を始めるための地図」がトレンドレポートではないかと考えています。
今回のレポートも、そのような観点からみなさまに活用いただけるよう制作しました。
AIが拡張する「自己経営」の時代
『WORK TREND REPORT 2026』は大きく2つのパートに分かれています。1つは、いま起こりつつある大きな変化としてのMEGASHIFT(メガシフト)。もう1つは、その変化を7つの分野に分けて紹介するTRENDS(トレンズ)です。
まずはMEGASHIFTについてお話しします。
働く場のMEGASHIFTは何と言っても、AIがもたらす変化でしょう。私はこれを「総管理者化社会」と名付けました。すべてのワーカーが管理者のように、場合によっては経営者のように振る舞わなければならない。AIという部下を使い、自分であらゆることを管理しなければならない。そうした「自己経営」の時代に突入したことが、もっとも大きなシフトだと言えます。
では、こうした社会の課題は何か。
総管理者化社会は、自分が何でもできるという有能感を満たしてくれます。一方で、できなかった場合は自分を責めるしかない、という構造を持っています。
哲学者のピョンチョル・ハンは『疲労社会』で、現代人は外からの圧力ではなく、自分自身によって疲弊していくと指摘しました。AIはそうした自己搾取をさらに加速させるのではないか。そんなことが予測されます。
注目すべき7つの潮流
続くパートがTRENDSです。
私たちは独自調査に加え、国内外のメディア記事、レポート、論文、ソーシャルメディアなど700以上の情報ソースを横断的に分析しました。そして、ワークスタイルやワークプレイスをめぐる7つの新たな潮流を浮かび上がらせました。
①Human-AI Collaboration AIは新たな「チームメイト」
②Redesigning Organizations & Careers 組織とキャリアを再想像せよ
③Learning-Work Integration 仕事と学びが溶け合っていく
④Humanity & Happiness 人間性・幸福という新たな指標
⑤Hospitality-Centered Workplaces オフィス戦略としてのホスピタリティ
⑥Adaptive & Sustainable Urban Integration 新しい働き方が都市を変えていく
⑦Integrated Governance & Trust 統合的ガバナンスと信頼の再構築
レポートでは、これらのトレンドを、それぞれ4つのブロックに分けて紹介しています。
・PULSE:2026年に、より顕在化するであろう8つの兆し
・REALITY CHECK:これらの潮流が日本の働き方や組織に入った場合、何が起こり得るか
・BLIND SPOT:潮流の外側にあり、見落とされがちな論点の俯瞰的考察
・FURTHER READS:理解を深めるために読むべき5冊の本
AIは新たな「チームメイト」
1つ目の潮流を例に、具体的にどんなことが書かれているかを紹介しましょう。
まず、PULSEとして興味深いトピックを8つ紹介しています。
たとえば「AI副操縦士が標準装備に」。AIは人間の業務と切り離された存在ではなく、常に隣りにいる存在である。この前提のもとに、いま、ホワイトカラーの業務が再設計されつつあります。
5~10年後には「AIオペレーティングシステムの到来」が予想されています。AIが企業の意思決定までを行うようになることです。
こうした状況下で起こりつつあるのが「エントリーレベル職の死」です。AIによる自動化で、いわゆる新人の仕事がごっそりなくなってしまうという状況です。
ほかにも、「ゼネラリスト」の逆襲、「マネージャー・ギーク」の台頭など、読むと誰かに話したくなるトピックや事例を、さまざまに取り上げています。
予想される課題
では、こうした潮流が実際に職場に入ってきたとき、どんなことが起こり得るか。これを考察したのがREALITY CHECKのブロックです。
直面すると予想されるのは、AIが行う業務を切り分けることの難しさです。一口にAIと言っても、いままで人間が行ってきた業務をそのままAIに置き換えればいいわけではもちろんありません。たとえば、営業などの対面業務では、担当者はその場で顧客の意外な困りごとを聞くこともあるでしょう。その仕事をAIに置き換えて自動化したとしたら、一見効率化に見える反面、そうした情報を得る機会は失われてしまいます。
どこまでを人間が担い、どこまでをAIで自動化できるのか。この見極めは実は難しく、実現にはかなりの試行錯誤、人員、予算が必要になります。
AIによる効率化は幻想?

AIにも見落とされがちな論点があります。私たちがBLIND SPOTのパートで挙げているのは、そもそもAIというものが、いま想像されているような「効率化の道具」としてうまく社会に浸透していくかは実はあやしい、という点です。
データセンターの建設や電力確保の問題もありますし、生成AIのビジネスモデル自体がかなり脆弱であることも指摘されています。また、効率化のみを目的にAIを導入した企業は、あまり成果を出せていないという報告もあります。
『WORK TREND REPORT 2026』では、他の6つの潮流についても、こうした多角的な分析・考察を行っています。組織やキャリアはこれからどうなるのか。コロナ後のオフィスに求められる役割をどう考えればよいのか。続きはぜひ、本書をお読みいただければと思います。
*TRENDSをさらに解説した第一部のアーカイブ配信はこちら
第二部:AIはインフラである──自社の価値を再定義するための対話
※本コラム限定! 第二部の対談の模様をお届けします

トレンドレポート刊行の目的
山下:ここからは若林恵さんにも入っていただきましょう。若林さんがコンテンツディレクターを務める黒鳥社には、以前からコクヨの研究活動に伴走いただいており、今回のレポートも一緒に編集したものになります。
ところで、最初にトレンドレポートを作ろうとお伝えしたとき、若林さんはすこし釈然としない反応をされていましたよね。
若林:トレンドレポートをニュートラルなものとして享受できる時代は終わりつつあると思うんです。
いきなり大きな話になりますが、いま、世界の秩序は大きく変わっています。いわゆる戦後のリベラルな秩序が壊れていく中で、我々のビジネスも「この土俵でやっていればいいよね」という前提が失われつつあります。AIに象徴されるテクノロジーの未来にしても、いままでは基本的にシリコンバレーが主導していて、世界はそれに追随する。だから我々もそのフレームの中でビジネスを考えるべきだと思われてきました。でもいま、彼らが出してくるアジェンダにそのまま乗っていいんだろうか?と世界は思い始めています。
そうなってくると、アメリカのコンサル会社的な未来予測のトレンドレポートを作っても、あまり意味はないかなという気がしたんですよね。
ですから、そういう状況を相対的に見る視点を持ちながら、じゃあ日本はどうするんだ、を考えなければならない。そこから抜け落ちているものがないかも考えた方がいい。そんなことを山下さんと話した結果、このような形のトレンドレポートになったわけです。
自分たちの仕事を再定義する
山下:世の中の議論を相対化して、自社に取り入れるかどうかを判断する。それはほとんど経営者の仕事に見えます。
若林:たしかにそうです。でもAIの時代が来ると言われたとき、一人ひとりの社員も「それを取り入れない選択肢もある」ことは認識していいと思います。
山下:逆に言うと、自分たちの仕事が何なのか、定義ができていないとまずいですね。
若林:まさにそこを定義してAI導入に成功したのが、アメリカの通信社AP通信です。
メディア業界はデジタル化によって収益構造と制作環境が激変し、記者と呼ばれる人たちの仕事がものすごく増えていました。以前は取材して記事だけを書けばよかったものが、音声を録り、動画を撮り、編集してあらゆるソーシャルメディアに書き出すことまで要求される。しかも人員は増やせない。完全に仕事がオーバーフローでした。
そこに対し、AP通信では記者が「記事を書く」という本来の仕事に取り組めるよう、AIを導入しました。つまり、記者の価値を再考し、その価値を彼らがきちんと出せる体制をつくるために、AIが使われたのです。
山下:いまの日本の会社だと、本当に意味のある仕事かどうかはあまり吟味せず「とにかく効率化のためAIを入れよう」というパターンが多いかもしれません。それで、意味のない仕事が逆に量産されてしまっている...。
AIはインフラ

若林:「AIはそれ自体としては価値を生まない」という考え方をした方が私はいいと思います。その点でおもしろいのが中国です。中国は、インターネットもAIも基本的にインフラだという考えを取っています。電気や水道と同じです。電気が通ったから会社の売上がアップするわけではないように、AIを使ったからと言って必ず利益が上がるわけではない。重要なのは、そのインフラを使って何をつくり、何を売るかです。
中国では物流などの産業AIが非常に進んでいます。欧米や日本だと、ホワイトカラーの仕事にどうAIを入れていくかという話になりがちですが、その発想のフレームも別に普遍的なものではないのです。
山下:自分たちは何者で、生み出している価値は何か。我々日本の会社も、いまこそそこを再定義する必要がありますね。そのきっかけに、今回のトレンドレポートをぜひ活用いただければと思います。
(2026年1月26日@コクヨ品川THE CAMPUS)
*『WORK TREND REPORT 2026』詳細はこちら
山下 正太郎
コクヨ株式会社 / ヨコク研究所 所長 / ワークスタイル研究所 所長 / WORKSIGHT 編集長
京都工芸繊維大学 特任准教授(2019-)、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート ヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン 客員研究員(2016-17)
2020年、黒鳥社とのメディアリサーチユニット/メディア「コクヨ野外学習センター」を発足。2022年、オルタナティブな社会をリサーチ&デザインする「ヨコク研究所」を立ち上げる。
若林 恵氏
株式会社黒鳥社 コンテンツディレクター
平凡社『月刊太陽』編集部を経て2000年にフリー編集者に。以後、雑誌、書籍、展覧会の図録などの編集を多数手がける。音楽ジャーナリストとしても活動。
『WIRED』日本版編集長(2012-17)。著書に『週刊だえん問答 コロナの迷宮』(黒鳥社、2020年)、『さよなら未来:エディターズ・クロニクル 2010-2017』(岩波書店、2018年)など。責任編集『次世代ガバメント:小さくて大きい政府のつくり方』。「こんにちは未来」「働くことの人類学」「blkswn jukebox」「音読ブラックスワン」などのポッドキャストの企画制作でも知られる。
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