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フリーアドレス導入の課題とは?成功に導く3つのポイント

公開日:2025.12.16

執筆:コクヨコラム編集部

#ABW #インフォーマルコミュニケーション #フリーアドレス

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フリーアドレス導入の課題とは?成功に導く3つのポイント

テレワークの定着や働き方の多様化を受け、オフィスのあり方を見直す企業が増えています。その選択肢の一つが「フリーアドレス」です。
しかし、フリーアドレス導入を検討する一方で、「自社に合うのか」「導入後の運用がうまくいかないのではないか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フリーアドレスの基本的な概要から、導入のメリット、よくある課題、そして導入を成功させるための具体的な秘訣までを、コクヨの実践事例を交えて詳しく解説します。
なお、本記事で解説するフリーアドレス導入のノウハウやコクヨの実践事例をまとめたホワイトペーパーをご用意しました。より詳細な情報を知りたい方は、ぜひダウンロードしてご確認ください。

1.フリーアドレスとは? 基本的な概要と導入状況

まず、フリーアドレスの基本的な定義と、「なぜ今注目されているのか」を見ていきましょう。

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フリーアドレスとは

フリーアドレスとは、オフィス内で社員一人ひとりの固定席を設けず、デスクを共用で利用するオフィスの利用形態です。社員は、その日の業務内容や気分に合わせて、自分の働き方に合ったスペースを自由に選択できます。

かつては先進的なICT企業や中央省庁など、一部で採用される働き方でしたが、近年では業種を問わず多くの企業で採用が進んでいます。

フリーアドレス導入が注目されるようになった最大の背景は、コロナ禍をきっかけとしたテレワークの定着です。

多くのワーカーが「場所にとらわれずに働ける」ことを認識しました。その結果、オフィスとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」が前提となりつつあります。 ハイブリッドワーク下では、従来の固定席運用だと出社率によって空席が目立ち、スペースの無駄を感じやすくなります。

また、オフィスが「働く場」の選択肢の一つとなったことで、「わざわざ来たくなるオフィス」であることが求められるようになりました。フリーアドレス導入によって従来の執務スペースを効率化し、その分をコミュニケーションスペースや集中ブースなど、多様な目的に使える空間へ転換する必要性が出てきたのです。

フリーアドレスの主なタイプ

フリーアドレスと一口に言っても、その運用形態は様々。自社の目的や働き方に合わせて、主に以下の3つの要素を組み合わせて設計します。

①導入範囲の決定
全席フリーアドレス: エリアを限定せず、全社員がオフィスの好きな席に座れます。
グループアドレス: 部門やチームなど、指定された範囲内(グループ席)の席を自由に選びます。

②予約方式
席指定あり: 事前にシステムなどで席を予約し、指定された席に座ります。
席指定なし: 予約はなく、出社時に空いている席に座ります。

③座席セッティング
アクティビティセッティング: 集中ブース、ミーティング席、オープンスペースなど、業務(アクティビティ)にあわせて多様な席タイプが用意されています。
ユニバーサルレイアウト: どの席もデスクやチェアの仕様がほぼ同じで、環境に大きな違いがないレイアウトです。

フリーアドレスのよくあるタイプフリーアドレスのよくあるタイプ

2.フリーアドレス導入で得られる4つのメリット

フリーアドレス導入は、単にデスクを減らすことだけが目的ではありません。主に4つのメリットが期待できます。

メリット1:スペース効率の向上
外出や会議、テレワークなどで使われていない席(空席率)を適正化し、執務スペースを効率化できます。空いたスペースを、不足しがちなミーティングスペースやワーカーが求める他の用途に当てることが可能。
ただし近年では、効率化だけを目的とせず、あえて社員数以上の多様な席を設けることで「働く場の選択肢を増やす」例も見られます。

メリット2:コミュニケーションの促進
固定席では関わる人が固定化しがちです。フリーアドレスでは、日によって異なる様々な人と席を接することで、チームや部署を超えたコミュニケーションが生まれやすくなります。
普段は話す機会のない管理職や他部署のメンバーとも会話しやすくなり、新たな情報や発想を得るきっかけにもなります。

メリット3:自律的な働き方の促進
「今日は集中したいからブース席」「チームで話したいからこのエリア」というように、自分で仕事の場所を選ぶ行為が、仕事の組み立てを自律的に考える意識を育てます。
また、毎日PCや書類を片付けて帰宅するルール(クリアデスク)が、終業のメリハリをつけることにも繋がります。

メリット4:組織変更への柔軟な対応
席と人が結びついていないため、組織変更やプロジェクト発足、人数の増減があっても、大掛かりなレイアウト変更工事が不要です。臨機応変に働き方を変えていくことができます。

3.フリーアドレス導入を成功させる3つのポイント

3.フリーアドレス導入を成功させる3つのポイント

フリーアドレス導入のよくある課題

フリーアドレス導入は、多くのメリットがある一方、特有の課題(デメリット)も存在します。計画段階でこれらの課題を想定しておくことが、フリーアドレス成功の鍵です。

■席の固定化: 結局いつも同じ人が同じ席に座ってしまい、固定席と変わらない状態になってしまう。
■コミュニケーションの課題: チームメンバーがばらばらに座ることで、かえってチーム内のコミュニケーションが不足する。
■収納・荷物の問題:
・自分の収納(ロッカーなど)の近くに座ってしまう。
・会議資料などが収納スペースに入りきらない。
・かばんやファイルボックスの置き場がなく、床や机の上が散らかる。
■運用上の問題:
・固定席がないため、郵便物や配布物をスムーズに渡せない。
・ノートPCのセキュリティ管理(施錠保管)を徹底できない。
・共有の文房具や備品の置き場が散らかりがちになる。

こうした課題は、導入目的が曖昧だったり、運用ルールやツールが整備されていなかったりする場合に起こりがちです。

フリーアドレス導入を成功させる3つのポイント

先に整理したフリーアドレス導入の課題を乗り越え、そのメリットを最大限に引き出すためには、押さえるべき「成功のポイント」があります。次からは、コクヨが考える、フリーアドレス導入成功のための3つのポイントをご紹介します。

Point 1.目的の明確化と社員への浸透
フリーアドレス導入で最も重要なこと。それは「何のためにフリーアドレスを導入するのか」という目的を明確にすることです。
「スペース効率化」「コミュニケーション活性化」「自律的な働き方の促進」など、企業によって目的は様々。
社員は「自分の席がなくなる」ことに不安を感じるものです。フリーアドレスという「手段」ではなく、「目的」に対するモチベーションを高め、社員自身がメリットを感じられるように浸透させることが不可欠といえるでしょう。
そのための手法として、現状の働き方や意識を可視化する「オフィスサーベイ」や、社員自らが新しい働き方を考える「意識変革ワークショップ」などが有効です。

Point 2.運用が維持できる仕組みづくり
フリーアドレスは、導入して終わりではありません。運用ルールが曖昧だと、なし崩し的に形骸化する危険があります。
・席の割り当て方法(抽選、予約など)
・席の占有時間の上限(固定化防止のため)
・PCや書類の保管方法
・スケジュールの共有方法
こうした運用ルールを、利用する社員も参加する形で策定し、納得感のあるルールを定めましょう。
さらに、ルールを定めた背景を説明会などで周知し、運用開始後は定期的にルールが守られているかチェックし、実態に合わせて見直していく「仕組み」が成功の鍵です。

Point 3.働き方をサポートするツールの整備
固定席の代わりに「どこでも仕事ができる環境」を手にするわけですが、それを支えるツールが不十分では、かえって効率が下がる恐れがあります。
フリーアドレス特有の「困りごと」に、ツールで対処しましょう。

課題:荷物が多くて移動が大変
→ PCや書類をまとめて運ぶ「モバイルバッグ」を導入する。
課題:かばんや荷物で机の上が狭い
→ 使うものをすっきりと置ける足元の「ワゴン」を整備する。
課題:PCの施錠保管が面倒
→ 扉を閉めると自動でロックが掛かる「個人ロッカー」で、負荷なく施錠を徹底させる。
課題:紙資料が減らない
→ 会議室や共用スペースに「モニター」を設置し、ペーパーレス会議を促進する。
課題:郵便物が渡せない
→ 個人宛の「メールボックス」やロッカー投入方式を導入する。

4.【コクヨ事例】フリーアドレス導入で働き方はこう変わる

コクヨでは、自社オフィスでもフリーアドレスを実践し、働き方の変革に取り組んでいます。2つの具体的なフリーアドレス導入事例をご覧ください。

コクヨTHE CAMPUS(品川オフィス)コクヨTHE CAMPUS(品川オフィス)

事例1:THE CAMPUS(品川オフィス) - 全館フリーアドレス(ABW)
築40年超の自社ビルをリニューアルした「THE CAMPUS」では、全館フリーアドレスを採用しています。
ここでは、フリーアドレスをさらに一歩進めたABW(Activity Based Working)という考え方を導入。ABWとは、業務内容(アクティビティ)に合わせて、ワーカーが自ら最適な場所を選ぶ働き方です。
フロアごとに「集中業務(捗る)」「リラックス・準備(整う)」「組織を超えた交流(育む)」「実験的なプロジェクト(創る)」といった機能を明確に定義。テレワークが浸透する中で、オフィスでしか得られない「経験の拡張」を目指し、ワーカーが目的に応じてフロアを選択できる設計になっています。

コクヨマーケティングオフィス霞が関オフィスコクヨマーケティングオフィス霞が関オフィス

事例2:霞が関オフィス - エリア毎フリーアドレス
霞が関オフィスでは、エリア毎に機能を持たせたフリーアドレスを採用しています。
リアルとオンラインのハイブリッドワークが前提となる中で、オフィスを「行くべき場所」から「行きたい場所」へと変えることを目指しました。
「Smart(スマートワーク)」「Team(チームで考える)」「Experience(リアルに触れる)」「Play Work(楽しむ)」の4つをキーワードに、個人業務の効率を重視するエリア、アイデア出しや議論をするエリア、オープンミーティングのエリアなど、機能に応じたフリーアドレス空間を整備しています。

5.フリーアドレス導入の成功事例とノウハウを資料で確認

フリーアドレス導入は、単に固定席をなくすことではありません。明確な目的設定、社員の意識変革、運用ルール、そしてサポートツールが揃って初めて、その効果を発揮します。
自社の働き方を見直し、フリーアドレス導入を成功させるためには、正しいステップと具体的なノウハウが必要です。
「フリーアドレス導入のメリットや課題を、もっと詳しく知りたい」
「自社に合うフリーアドレスのタイプを検討したい」
「コクヨの具体的なオフィス事例や、働き方のイメージを参考にしたい」
このようにお考えの方へ、本記事で解説したフリーアドレス導入のポイントや、コクヨの実践事例で得られた知見を詳細にまとめた資料(ホワイトペーパー)をご用意しました。
ぜひこの資料をダウンロードいただき、貴社のオフィスづくり、働き方改革にお役立てください。

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