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2024.07.10

実は世界のワーカーの8割はデスクレスその課題解決につながるDXとは

知っておきたいトレンドワード34:デスクレスワーカー

仕事といえば、オフィスでパソコンに向かうイメージを持つ人が多いと思うが、実は現場で働くデスクレスワーカーの方が圧倒的に多い。現場ならではの課題や、その解決につながると期待され、市場規模が急速に拡大しているデスクレスSaaSについて解説する。

デスクレスワーカーとは

デスクレスワーカーとは、デスクワーク以外の現場で活躍する人のこと。ノンデスクワーカー、モバイルワーカー、ブルーカラーワーカーと呼ばれることもあります。

具体的な業種は、医療・福祉、教育・保育、食品・商品等の小売業、警察や消防、役所の窓口業務など現場で働く公務員、運輸、通信、製造業、農林業や漁業などが挙げられます。

「The Rise of the Deskless Workforce2018 」によると、世界の労働人口の約80%にあたる約27億人がデスクレスワーカーだと言われています。
先進国である日本でも、約6割をデスクレスワーカーが占めています。「仕事=オフィスワーク」のイメージが強いですが、実はデスクレスワーカーは世界でも日本でもマジョリティなのです。

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独立行政法人労働政策研究・研修機構「職業別就業者数」より




デスクレスワーカーが
抱える課題

デスクレスワーカーが働くうえで抱える課題には、大きく以下の5点が挙げられます。


深刻な人手不足

デスクレスワーカーが働く多くの現場では、人が行うからこそ提供できる、細やかで柔軟な対応が求められますが、昨今は、労働人口の減少からくる人手不足は深刻です。労働環境の厳しさから離職率も高く、なかでも建築業(正社員)や飲食業(アルバイト)では慢性的な人手不足です。
コロナで、エッセンシャルワーカーの重要性と過酷さが、あらためて浮き彫りになりましたが、不測の事態のときに影響を受けやすいのもまた、現場で働くデスクレスワーカーです。

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厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」より



IT化が進んでいない

デスクレスワーカーに必要とされる技術やスキルは、現場経験に基づくことが多く、デジタル化への対応が遅れています。技術やスキルを重視する従来の仕事のやり方に固執する傾向があり、デジタル移行への抵抗感が強いことがボトルネックになっていると考えられます。セキュリティに関する意識もまだまだ浸透しているとはいえません。 一方で、これまでデジタルに抵抗感が強かった熟練の年長者も、プライベートでスマートフォンを使う機会が増えたことで、デジタルツールの操作に馴染みつつあります。以前よりは受け入れのハードルが下がっている可能性も高そうです。


ペーパーレス化が進んでいない

これまでデスクレスワーカーの職場では、ペーパーレス化が進んでいない状況でした。その背景として、忙しい現場で手早く確認・共有・記入のできる紙の方が効率的だったことから、パソコン用のスペース確保や通信環境整備といった業務環境が整っていないことが考えられます。
一方で、昨今は、本社・本部でICTを取り入れ情報管理が進むなかで、同様の対応が現場にも求められるように。そのため現場では紙で運用し、その後データ化するといった非効率な業務による長時間残業だけでなく、情報のタイムラグや転記漏れ・紛失リスクも起きています。


教育の機会をもちにくい

技術を要する職種の場合、現場でしか学べないことも多く、人材育成を効率的に行うのが難しいという課題もあります。e-learningやオンライン研修などを取り入れているケースもありますが、現場での直接指導を必要とするケースも多々あり、指導者不足も課題です。


社内コミュニケーションが取りづらく、孤独を感じやすい

デスクレスワーカーは、各現場を少人数で任されることが多く、社員同士でリアルタイムのコミュニケーションが取りづらい状況です。そのため、わからないことがあっても誰に聞いていいのかわからない、トラブルがあっても相談できない、など、孤独を感じやすい傾向があります。




デスクレスワーカーに
必要とされるDXとは

「The Rise of the Deskless Workforce2018 」によると、これまでは、デスクレスワーカーがマジョリティにもかかわらず、ベンチャー企業がテクノロジー開発に投資する総額のうち、デスクレスワーカー向けへの投資は全体の1%に過ぎないという数字が出ています。

ただし、デスクレスワーカーの課題を解決し、働き方改革を推進するためにも、DXの導入は必要不可欠であり、デスクレスワーカー向けのDX開発は急務です。具体的には、以下のようなシステムやツールの活用により、深刻な人手不足の解消、生産性の向上、職場の魅力アップなどが期待できます。

・勤怠管理や申請業務のデジタル化
・報告書・契約書・マニュアルのデジタル化
・ドローンやロボットを活用した作業の安全性向上
・簡単な事務作業をオンラインやクラウド上でできるシステムやツール
・リアルタイムで情報共有やコミュニケーションができるシステムやツール
・動画マニュアルなどノウハウを共有できるシステムやツール




デスクレスワーカーの
DXを推進するデスクレスSaaSとは

デスクレスワーカーは、日本の労働人口の6割を占める巨大なマーケットであるにもかかわらず、DXはほぼ手つかずの領域。そんな、デスクレスワーカー向けの業務支援クラウドサービス、デスクレスSaaSの開発が急速に進んでいます。

その理由には、オフィスワーカー向けのSaaSの普及が進み、技術が進化したこと。スマートフォンやタブレットが浸透し、年長者にも抵抗感がなくなってきたこと。深刻な労働人口の減少で生産性向上の必然性が高まっていること、などが考えられます。

2021年のデスクレスSaaS市場が161億円だったのに対して、2022年は前年比139%と急激に拡大しており、今後さらなる拡大が見込まれています。

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デロイトトーマツミック経済研究所株式会社「デスクレスSaaS市場の実態と展望 2023年度版」より

デスクレスワーカー向けのサービスの特徴は、タブレット、スマホ、ウェアラブルなどパソコン以外のデバイスを使用すること。また、Wi-Fi環境が整っていない現場での使用が前提であること。その他、紙からの移行を想定した開発などが挙げられます。 また、特定の業界向けのサービス(バーティカル型)だけでなく、汎用的に多様な業界で使える業界横断型(ホリゾンタル型)のものも増えています。


デスクレスSaaSの事例

デスクレスSaaSには特定業界に特化したサービスを提供する「バーティカル型」と、業界に特化しない共通機能を提供する「ホリゾンタル型」があります。

バーティカル型の例として、建築業向けに、施工管理から顧客管理、原価管理まで必要な情報を一元管理できるもの。薬剤師向けに、電子薬歴や在庫管理、患者フォローができるもの。ウェルネス業界向けに、予約・決済や入会・支払い手続きなどを効率化できるものなどがあります。

業界に特化しない共通機能を提供するホリゾンタル型の例には、チェックシートの作成や一括承認、ダッシュボード上でのチェック状況の可視化、監査・現場レポート作成・承認などができるもの。動画マニュアルを作成し、多言語に自動翻訳や閲覧履歴のデータ化にも対応できるもの。トランシーバーのように、複数人と同時にライブコミュニケーションが可能なものや、ビデオ通話しながらポインターで細かく指示を出せるものなどがあります。

こうした技術を取り入れ、ムダな作業やミスを減らし、データ収集と分析を通して、より技術やサービスを向上させていくことで、職場にとってもワーカー本人にとっても、働きやすさと生産性向上の実現につながるはずです。


作成/MANA-Biz編集部