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地域の未来をつくる、国立大学初のフューチャーセンター ~「徳島大学フューチャーセンター A.BA(アバ)」事例レポート~

徳島県徳島市に3つのキャンパスを置く徳島大学。そのひとつである常三島キャンパスに、「徳島大学フューチャーセンター A.BA(アバ)」が誕生したのは2015年9月のこと。以来、国立大学初のフューチャーセンターとなる「A.BA」では、「持続可能な地域をつくる」を合言葉に、日々未来思考の対話が行われています。今回は「A.BA」が持つ空間の特徴、そしてフューチャーセンター設立に込められた想いをレポートします。

フューチャーセンターとは、「今、必要な未来をつくる空間」

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2015年9月にオープンした「徳島大学フューチャーセンター A.BA(以下:A.BA)」。常三島キャンパスの一角、地域創生・国際交流館の5Fに広がる470㎡ほどのスペースに足を踏み入れると、畳敷きの小上がりやコーヒーやスナックが置かれたカウンターやキッチン、3Dプリンターを備えたラボスペースが。国立大学では初となるフューチャーセンターには、これまでの教室やラーニングコモンズとは一線を画するクリエイティブな空気感が漂っていました。

 

1990年代にヨーロッパで生まれ、地域の課題解決や公共空間のデザイン、人材育成などに効果を発揮することから世界各地で設立が続くフューチャーセンター。多様な人々が対話するオープンイノベーションプラットフォームとして注目されるこの空間の役割とは?

 

「フューチャーセンターをひと言で表すなら、『今、必要な未来をつくる空間』。これまでのアプローチでは対処できない社会課題に対して、専門性や立場の異なる人々が領域を横断して集まり、未来思考で対話し変化を生んでいく“場”です」とは、徳島大学大学院教授・地域創生センター長の吉田敦也氏。A.BAのミッションは、人口減少による衰退に直面する徳島の「地域の持続可能性」を切り拓くこと。また、イノベーションの担い手となる次世代のリーダーを育成することも国立大学としての役割だと言います。

 

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「フロアレイアウトや家具・什器の選定など、A.BAではすべてが自由な発想を刺激して『未来をつくる』という目的のもとデザインされています。教室やラーニングコモンズとあえて要素や雰囲気を変えていることも『既存の教育空間という枠や概念から自由であること』を伝えるため。入った瞬間から、それぞれの常識や立場は捨てて、未来思考で対話する。フューチャーセンターとは、そういう特別な“場”であるべきなのです」(吉田教授)

 

A.BAには、地域の人々や企業、学生、国内外からのゲストなど、多様な人々が集まり「今、必要な未来をつくる」ために対話が行われていると言います。では、このフューチャーセンターには、具体的にどのような空間的要素が用意されているのでしょうか。

テーブルの配置で未来が変わる!?創造性を誘発する自由な空間

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『未来をつくる』という目的のもとデザインされたA.BAは、機能の異なる8つの空間で構成されています。たとえばエントランス部分の「Future Gate」(写真左上)は、日常から未来思考へとスイッチを切り替える場。純白の間仕切りとカウンターが設置されており、「ここから先は特別な場所」ということを感覚的に伝える機能を持っています。また、畳敷きの「Inspire Space」(写真右上)は日本の伝統と文化を基盤に思考を深められる場所。大きなカウンターを備える「Connective Kitchen」(写真左下)は、コーヒーやスナック片手にコミュニケーションを取れる場所です。ソファでじっくりと対話ができる「Dialogue Terrace」(写真右下)といった空間もあります。

 

「A.BAで行われるプログラムでは、まずおいしいコーヒーとお茶でくつろぐことが多いですね。食べることは、未来思考へのウォーミングアップ。脳をバランスよく動かし、自由な発想を生むためにも必要な時間です。日本の教育空間は飲食禁止の場合が多いですが、そうした禁止事項がクリエイティビティを抑圧することもある。不要な常識やルールはできるだけ取り払うことが大切なのです」(吉田教授)

 

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A.BAには、3Dプリンターなどを備えるモノづくりスペース「Fab Lab」(写真上)やフロアの中央には可動式テーブルやチェア、低めのスツール、ホワイトボードなどを備えた「Live Studio」(写真下)を配置。グループワークやプロジェクターを使ったプレゼンテーションなど、用途に応じて自由に空間をアレンジできるようになっています。

 

「たとえば20人でグループワークをする場合、2人組みのチームを10つくるか4人組みを5つにするかで、ディスカッションの結論も変わってきます。つまり、机の置き方ひとつで未来は変化する。A.BAでは、空間にあるものすべてが未来をつくるのための道具立てですから、この空間を訪れる人には『未来のことを想像しながら、ワークに最適なスペーシングや家具の配置も含めてデザインしてください』と伝えています。自分次第で動かせる“可能性”をたくさん用意しておくことが、フューチャーセンターにおける大切なポイントだと思います」(吉田教授)

 

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第29回日経ニューオフィス賞の四国ニューオフィス推進賞を受賞するなど、空間的に高い評価を得るA.BA。既存の常識やルールにとらわれないこの場所には、「未来は自分たちでつくるもの」というメッセージが満ちています。

フューチャーセンターがつくる未来

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オープンから1年以上が経ったA.BAでは、これまで数多くのプログラムやセッションが開催されてきました。たとえば開所式では、環境先進都市として知られる米国ポートランドからまちづくりNPO「シティリペア」創始者のマーク・レイマンさんを招聘し、基調講演とパブリックスペースづくりのワークショップを開催。その後もポートランドから多くのゲストが訪れ、多彩なプログラムを展開しています。また、地元企業と学生が協働する「実践力養成型インターンシップ」や小中学生を対象にした「ロボットプログラミング講座」なども行われています。

 

「地元の農家や食品事業者、学生などが手がける『徳島大学ファーマーズマーケット』は、ポートランド州立大学構内で開催されているファーマーズマーケットをモデルにしたプロジェクト。徳島の農林水産業や食品産業のイノベーションと食育推進を目的として開催されています。開所式の日に第1回、2016年9月に第2回が開催されました。すでに事務局が立ち上がり、今後はコンソーシアムが設立される予定です。このほかにも多くの地方創生プロジェクトが生まれていますし、学生を対象にした授業やゼミナールなども定期的に開催しています」(吉田教授)

 

すでにいくつもの“未来への芽”が生まれているA.BAですが、吉田教授はさらに先を見据えています。

 

「フューチャーセンターの役割は『未来をつくる』ことですから、まだまだ成果が見えない部分も多い。ただ、様々な可能性は感じています。教科書のない学びをつくる入口になるかもしれないし、教員同士が教育の在り方を根本的に問い直す場所として機能してもいい。徳島と世界をつなぐ窓のような役割も強めていきたいと考えています。また、フューチャーセンターは、訪れる度に驚きがあって想像力が刺激される“特別な場所”。そのためにも、空間的な面白さを常にアップデートしていくことも必要だと思います」

 

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領域や地域を横断して多彩な人々が集うフューチャーセンターは、これまでとは異なるアプローチでソーシャルイノベーションを起こす場所。自由で挑戦的なこの空間から、いったいどんな未来が生まれていくのでしょうか。国立大学初のフューチャーセンターとして設立されたA.BAは、これからの社会や学びの在り方を指し示すひとつの事例になるでしょう。

 

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■第29回「日経ニューオフィス賞」コクヨ事例

http://www.kokuyo-furniture.co.jp/blog/sr/2016/10/29newoffice.html

 

 

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