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コクヨ学びのセミナー2018「経営戦略としての学習環境」イベントレポート

2018年8月31日、東京大学情報学環・福武ホールにて「経営戦略としての学習環境」と題したセミナーを開催しました。近年ではラーニンコモンズ(以下、LC)を始めとする、学生が主体的、かつ活発に自学自習を行う空間の整備が進んでいます。そのような大学の学習環境の拡充を、大学の経営戦略の視点から考える。それが今回のセミナーのテーマです。当日は大学の経営に携わる方、事務・教員の方など100名近い方にご出席いただきました。質疑応答では活発な意見も交わされ、本テーマへの皆様の関心の高さが伺えました。

異なる視点から見た、ラーニングコモンズの創設、再建における最重要事項

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最初に登壇いただいたのは、東京大学大学院情報学環教授・山内祐平先生(上写真左上)。会場となった福武ホール内にあり、2018年3月にリニューアルされたLC「学環コモンズ」を事例に「学習空間のリニューアル戦略」についてお話しいただきました。
東京大学ではリニューアルに際し、「2008年のオープン以来、多くの学生に利用されてきた背景を踏まえ、次の10年もさらに主体的に利用して欲しい」という想いで、ユーザーである学生の意見を募るワークショップを開催しました。壇上にはプロジェクトリーダーとしてワークショップに臨んだ杉山昂平様(上写真右上)が立ち、実際に学生から挙げられた意見やそれが実用レベルでどのように反映されたかなどを詳細に解説。結果、学生の意見を取り入れて生まれ変わった「学環コモンズ」は、従来以上の創造的共同スペースとして利用されているといいます。さらに山内先生はハーバード大学の戦略を引き合いに「成功の秘訣」を紐解かれました。コモンズ的空間の進化、学習空間としてだけではなく「誰が何をする空間なのか?」という学習活動・学習共同体の観点の必要性。それらが「研究」「学習」「社会貢献」の3軸を根幹とする大学経営において、今後いっそう重視されるだろうと述べられました。

 

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続いては共愛学園前橋国際大学学長・大森昭生先生(上写真左)による特別講演。「学びの質転換・可視化・接続を生む環境デザインと募集・ブランディングへの効果」のテーマでお話いただきました。
共愛学園前橋国際大学は群馬県前橋市にキャンパスを持つ学生数1000人規模の大学。近年話題を集める理由を、2012年に完成した「KYOAI COMMONS」を核としたアクティブラーニングの推進と、それを活かしたブランディングにあると分析された大森先生。建物の設計段階で、設計図や予算までオープンにし、学生と対話をし、随時その意見を反映させたからこそ、現在は学習、研究だけではないさまざまな利用がなされ、大学の顔となっていると紹介。また、設計過程で議論が交わされたことにより、学生、教職員の間で同大学の方針が共有されたことも大きな効果を生んだと大森先生は振り返られました。大森先生のお話から、大学規模や所在地区により変わるブランディングの重要性、地域社会との共存の必要性が、出席者の方々の間で共有されました。

 

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3人目の登壇者は京都大学附属図書館事務部長・米澤誠様(上写真左)。前職である東北大学に2箇所のLCを立ち上げた経験を元に「パブリックスペースとしてのラーニングコモンズ」をレクチャーしていただきました。
とくに米澤様が強調されたのが、LCをアクティブラーニングの場としてではなく、パブリックスペースとして捉える考え方。「人がいる場所に出かけたくなる心理」から、学生の利用頻度を底上げするLCの在り方を紐解かれました。さらに米澤様は、LCの理論化を考える過程で出合ったデザインプロセスを一般化する「パターン・ランゲージ」という手法について解説されました。LCをパターン・ランゲージ化することにより、想定される「状況」、その状況で発生しやすい「問題」、そして問題への「解決」をセットで考えることが可能となること。結果として、一人ひとりの場面や状況に応じた多彩なニーズに、ひとつの建物内で応えることができること。お伝え頂いたそれらのメリットは、多くの参加者の興味を引いていました。

それぞれ異なる視点から学習環境の設置・改善を解説頂いたお三方の講演。皆様のお話に共通していたこととして、学生のニーズを読み解き、それに対応した学習環境を作ることの重要性が含まれていました。

有意義なパネルディスカッションと社会構造にまで話題が広がった質疑応答

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続いて壇上では、講演して頂いたお三方によるパネルディスカッションが開かれました。都市型のキャンパス内で、研究施設である大学院の学習環境改善を手がける山内先生、郊外の中小規模大学でブランディングを含めた舵取りをする大森先生、国立大学内の図書館に新たな価値の創出を目指す米澤様。それぞれ異なる立場から見る学習環境と経営戦略について交わされる意見は、さまざまな立場からご出席頂いた皆様の思いを代弁するような具体的な内容となりました。

 

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パネルディスカッションの後は質疑応答。出席者の方々から挙げて頂いた質問に、登壇者のお三方がそれぞれの立場から回答しました。話題は学習環境の中でもとりわけ話題となったLCと図書館の関係や、LC利用のモラルコントロールから、ICT教育、society5.0などの新たな社会構造、教職員への指導を含めた大学改革にまで広がり、非常に有意義な対話が交わされました。

今後いっそう高まるラーニングコモンズのニーズ

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LCは学習、研究の場としてだけではなく、さまざまな場面で活発に利用されることが、やがて大学全体の活性化に繋がる――立場、視点は異なりながらも、今後のLCに求められる共通項が浮き彫りとなった今回の講演。総括として「社会構造が変わっても、結局は人と人との繋がりがベース。それを築くコミュニティとしてLCの空間構築が求められます」(米澤様)、「大講義室からの脱却。知識習得はオンライン学習になり、教室はアクティブラーニングが実施できる中小規模がメインとなることでしょう。コモンズ空間の進化は、これからさらに必要となるはず」(山内先生)、「地方の小規模大学におけるブランディングとしてLCを含む先進施設の存在は不可欠。建物を建ててから取り組むのではなく、取り組みを基盤に環境構築をすることが望ましい」(大森先生)といったお話を頂きました。

残暑厳しい8月の末日に大勢の方に足をお運び頂き、またさまざまなお立場からのご意見、ご質問を頂戴し、当日は非常に有意義なイベントとなりました。ご参加頂いた皆様、ご登壇頂いた皆様、東京大学様、本当にありがとうございました。

 

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2018.08.20
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