
東日本大震災から、今年で5年。震災をきっかけに強化された企業の防災対策も、そろそろ内容を見直す時期を迎えています。
そこで今月は、コクヨで企業の防災対策提案をしている酒井希望さん(事業開発センター/防災ソリューション事業部)に、企業の防災備蓄品の現状、これからの課題、見直しのヒントをうかがいました。
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東日本大震災のあと、企業は防災備蓄品の購入を進めましたか?

震災後、多くの企業が食糧や水を中心に備蓄品を購入しました。
しかし、それぞれの備蓄品が「何のために必要か」という点までしっかりと考え、商品を選んだ企業は少ないようです。そもそも、自社に必要な備蓄品の種類と数量を把握していない企業も多く、語弊をおそれずに言えば、その大半が「不安だから、ただ物を揃えた」という状態に留まっています。
また、震災から5年が経ち、担当者が交代する企業も増えています。ところが、前任者がどんな意図

で備蓄品を備え、運用マニュアルを作ったかがわからないため、うまく運用ができないケースが多々みうけられます。
上の2つのケースは、ただ物を備蓄しているだけで、実際に災害が起こったときの対応には不安が残ります。防災を意識しているが、実態としてはできていない。これが多くの企業の現状であり、改善すべき今後の課題でもあります。
■まず、何から取り組めばよいのでしょうか?
まずは、自社の備蓄品の現状を知ることが重要です。
従業員数やオフィス環境は日々変化するため、常にオフィスの状況と照らし合わせて、備蓄品の量と種類に問題がないか見直す必要があります。

それとともに備蓄品の収納場所は、使う場所と距離や動線を考慮することが大切です。
例えば、ビルの10階に災害対策本部があり、備蓄品が地下一階にあるという状態では、災害時、実際に機能することは難しいでしょう。
■こうした現状を踏まえ、どのように企業は防災備蓄を行えばよいのでしょうか?
コクヨでは、様々な企業へのお手伝いの経験から、同業種・同エリアの防災対策の例をご紹介することができます。近い立場の他社と比較することによって、自社に必要な備蓄品の数量・対策などを検討するというアプローチ方法です。
さらに、備蓄品の収納方法もお客様の働き方に合わせ、アドバイスを致します。多くの企業では執務スペースから離れた倉庫に全ての備蓄品を収納する傾向にあります。しかし、備蓄品は本来、地震が起きてすぐに使う工具や救急箱等は近くに置き、時間が経ってから使うものは倉庫にしまうなどのバランスをとることが重要です。コクヨは企業の働き方、レイアウトに合わせて、最善の備蓄方法を提案致します。

また、お客様の要望に応じて、物品だけでなく、コンサルティング業務、例えば、防災マニュアルのブラッシュアップや、避難訓練の支援などもご提案しています。
以前、ある企業から「防災マニュアルが完成しているので見てください」という依頼がありました。しかし、マニュアルは会社の実状に応じて変わっていくもので「完成している」という状況が、そもそもの問題でした。そういった点を指摘することからスタートし、そこから3年間、毎年マニュアルを見直すプロセスをお手伝いしたケースがありました。
その後、4年目には「今年からは自分たちだけでマニュアルの見直しができそうです。」という連絡があり、「自社で防災訓練を行うので、見に来てください」というお誘いまで頂きました。このようにクライアントの独力で防災対策を進化させることができるようになったという状況を目の当たりにでき、とてもうれしく感じました。
■今後、企業にもとめられる防災対策は?

先ほどの企業の例にもあるように、「対策をした」「何かが完了した」という一時的な結果だけを求めるのではなく、さらに良くしようと常に発展進化させる状態を作ることが重要です。また、防災対策は会社の業績に直接的には寄与しません。そのため、担当者が苦心しながら進める対策が企業にとってのコストではなく、バリューであると、経営層が積極的に発信することも不可欠です。
コクヨのソナエルカタログでは様々な防災備蓄用品を取り揃えています。
カタログご希望の方は担当営業までご連絡下さい。
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