KOKUYO FURNITURE


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Design philosophy コクヨのデザインに対する考え方

Vol.02 TUKURITE(ツクリテ)がつなぐモノづくりへの想い 藤木武史(コクヨファニチャー商品開発担当役員)× モノづくりプロジェクト「TUKURITE(ツクリテ)」参加若手社員

TUKURITE(ツクリテ)とは、コクヨの若手開発者育成の一環で行われたモノづくりプロジェクトの呼称である。商品開発担当役員みずからが指揮をとり、のべ33名が参加した。参加一人ひとりが、企画からプロトタイプの制作までの全てを担当し、最終的には、東京デザイナーズウィークでの発表を目指して活動した。TUKURITEが終了して3年、卒業生11名を集め、当時からの心境の変化や、未来に向けて思うことを聞いてみた。

藤木 武史

コクヨファニチャー
株式会社
商品開発担当役員

TUKURITEが育んだもの

藤木今日はたくさん懐かしい顔が集まってくれて、どうもありがとうございます。2006年から3年にわたって『TUKURITE』をやってきました。参加してくれた皆さんは、当時それぞれに想いや悩みを持ちながら参加してくれていたと思います。それから数年経って、少し実務を経験してきた皆さんが、TUKURITEの経験をどう生かしてくれているのか、今どんなことを考えているのか、ぜひみなさんの話を聞かせて下さい。

鈴木そうですね、当時の思い出といえば、何度もダメ出しされてなかなかデザインが決まらなかったにも関わらず、パートナー業者さんに根気よく対応いただいたことです。自分のアイディアをカタチにするのは大変だったけど、なんだかすごく嬉しかったの覚えてます。

佐々木僕も同感です。TUKURITEでは純粋にモノづくりに関わってる時間の楽しさを改めて感じることができました。だから、想いを届けるターゲットを意識する以前に、自分がモノづくりが好きかどうかということがすごく大事だなと思って。仕事に対しても、いつもそういう気持ちで向かえたら良いなと思っていますし、今はそれができているのかなぁと不安になりますね。

増井私も、自分が商品に向かう姿勢とか考え方とかの根本は、あまり変わらずにやれてるかなと思っています。でも、当時と違うな、と一番感じることは「量産の難しさ」ですね。商品は1万個作ったら全く同じようなクオリティと安全性で1万人の人の手に届かなければいけない。色んな使い方をしても、怪我なく安全に楽しく遊べるようなものを作らなければなりません。そして、1万人に表現したいことが端的に分かりやすく伝わらなければ、商品を手にとってすらもらえないんです。TUKURITEの時は、作る過程で迷ったり悩んだりしているうちに、自分が伝えたい想いが拡散してしまい、結果的には全部詰め込んでしまって分かりにくくなっていました。今もまだ、想いをシンプルに伝えること、困難なことがあっても想いを持続させることの難しさ、をすごく感じていますが、それを乗り越えて商品が出来たときの喜びこそメーカーに入った醍醐味だと思うので、もっともっと経験を積まないと…。

相原私も作る過程で結構悩みましたね。でもそのおかげで気付いたことは、作った瞬間が完成ではなく、作ってからどう運用するのかということが大切だということです。TUKURITEで色々な工場の方と直接お話したり、藤木さんと直に相談ができたことで、たくさんの刺激をもらえたのがきっかけだったと思います。

崎川私も色々悩んだ時に、会社の先輩たちにすごく助けていただきました。TUKURITEでは東京デザイナーズウィークのコクヨの100%デザイン展示ブースの設計・デザインを担当したのですが、みんなの作品を魅力的にみせるプレッシャーとなかなか完成できない不甲斐なさで、苦労したの覚えています。でもおかげでメンバーとの絆もできました。実は今もTUKURITEメンバーの1人ととあるプロジェクトで一緒に仕事をしていますが、楽しくやりがいを感じています。
いま、仕事では設計者として、クライアントの先に居るお客様を見据え、B to B とB to C の両方の視点を持って運用まで含めて考えなくちゃいけない立場にいます。相原さんが言ったみたいに、実務では作って終わり、では無いんですよね。意思決定者である社長や総務さんたちは、将来にわたって自分の会社の価値を感じてもらえるような提案を求めているんです。だから限られた時間のなかでも、きちんと運用のこともまとめていかなくてはいけない。でもそこまで考えてデザインするというのは実際とても難しくて、まだまだできていないです…。

大島 崎川さんの『限られた時間でデザインする難しさ』良く分かります。TUKURITEの頃の悩みって、自分のデザイン表現について悩むだけでよかったんですね。でも今は、もっと現実的になってきて、『コスト』や『スピード』を求められる中で、ちゃんと主張しながらも自分らしくアウトプットしていく難しさに悩んでいます。決められた時間内に要件は満たして、さらにもう一歩上の案を、と思う気持ちはあるんですけど、納得いくものになってないなって思うことが多くて…。自分でも納めるのに必死だなって分かるんです。だから、よく上司にも「お前何がしたいねん」言われるんだと思う。

TUKURITEが育んだ精神

藤木それぞれ悩みを持ってるみたいですね。純粋に自分のモノづくりに打ち込めたTUKURITEとは違って、実務には時間やコスト、多くの関係者、などたくさん考えなければならない要素が出てきます。ともすると、その渦の中に埋もれそうになるんですね。作り手は自分がどういう強みとか魅力を持っているのか自覚し、その魅力をちゃんと保ちつづけることも大事です。大島さんの上司もそれを分かって言ってくれているんだと思いますよ。実は、みなさんのこういう気付きがすごく知りたいところでして…今の仕事とか、職場仲間とかに波及できてたらいいだけど、どうでしょうか?

花田僕は崎川さんと同じ部署でオフィスの設計を担当していますが、『この人が、このときに、これをどう使うか』というところを考えることって、TUKURITEの思考って似ていて、何よりも大事な考え方だと日々感じています。

稲垣私も、TUKURITEをやってみて「どうやったらお客様が買いたいと思うかな」とか「どうやったら使いたい!と思うかな」とか、そういう思考ってすごい大事だと感じました。それはいつでもどんな仕事にでも通じてくるんだろうなと、最近すごく思うんです。 コクヨが作ってる商品って、実は作ってる自分たちも使ってる、それってすごく可能性にあふれていると思います。自分たちが日々使っているものだからこそ、「どうやったらお客様が買いたいと思うかな」とか「どうやったら使いたい!と思うかな」と考えていることを、ダイレクトに次の開発に活かせるから。でも、B to B だと商品に込めた想いを、最終的に使う人ではなくて、商品を買うと決める人に対してアピールしなきゃいけない。B to B とその先のCまで想いを届けるにはどうしたらできるのかなって、最近特に考えますね。

奥角商品に込めた想いを最終的に使う人へきちんと伝えたいのは、僕も同感です。藤木さんは「いつもターゲットを意識する」って言っていますよね。TUKURITEの時はただ「モノを作りたい!」っていう気持ちが強くて、ターゲットへの意識が少なかったと思います。でも、繰り返し「どんな人のために作るのか?」と考えさせられたことで、ターゲットに対して適格なアウトプットになっているか、という思考の大切さを学びました。
今は意識して自分から周囲のメンバーに対して、ターゲットのことをしっかり考えたモノづくりを働きかけるようにしています。誰のために作るのかを意識しないと、想いが伝わらず、誰がやってもいい仕事になってしまう。誰でもできる開発なんて嫌ですから。今年4年目になって、そういう「自分らしいモノづくり」を意識するようになりました。

値賀そうですよね。でも、できあがった商品が、私が説明しなくても、それを見た人にその商品自体が語りかけるようなものにはなかなかできないです。そこがデザインの肝なんだろうなと思いますが…。
ターゲットに対して、モノを通して言いたいことを伝えるのってすごく難しいです。

徳山伝える難しさを感じるというのは、裏返せばそこにすごく責任を感じている、ということかもしれません。
『TUKURITE』って自分の想いをストレートに打ち出せる分、すごく責任を感じてやっていた気がするんです。僕は日々の業務でも自分が納得できるものづくりがしたい。そのためには、自分がデザイン担当として携わるモノにはもっと想いを伝えていかなきゃいけないし、それだけの責任を持ってやらなくちゃいけないんだなっていうのを最近すごく感じています。

藤木既に皆さんの中には「どんな人の為に自分がデザインするのか」という強い意識が根付いてきているようで、聞いていてとても頼もしく思いました。当時から、みなさんにはターゲットを明確に意識してデザインしようって、ずっと言ってきました。それが私が『TUKURITE』に込めた一番の想いだからです。でも、そのことを理解してくれるまでに、みなさんはすごく苦労したのではないでしょうか。恐らく、その苦労ポイントは2つくらいあって、1つは「テーマは決まっているのに、ターゲットが決まらない」場合、もう1つは「ターゲットが決まったあとの形にする、伝えるっていう難しさ」だと思います。特に、誰に対してデザインしたらいいのかが決まらない時は、それはもうめちゃめちゃ苦しかったはずです。でも、どれだけ自分で克服してアウトプットしたか、それを実際見に来たお客さんがどれだけ反応してくれたか、という経験をしたみなさんには、今に活かせる何かがちゃんと残っているんだなと聞いていて感じました。君たちには、これからも自分のポリシーやメッセージをきっちり持って表現し続けてほしいと思っています。それが「作り手 TUKURITE」側の責任であり、姿勢であり、そして何よりもクリエイターとしての醍醐味ですものね。…偉そうに言ってますが、実は私もいまだにすごく難しいと感じています。ぜひ、一緒に頑張りましょう。

終わりに

モノづくりの次世代を担う若手社員の人材育成施策として行われた「TUKURITE」プロジェクト。今回、数年ぶりに集まった卒業生たちの言葉から垣間見えたこと、それは、若き開発者・設計者たちの心の中には、確かに作り手≠ニしての自覚とターゲットに向き合う姿勢が根付いている、ということである。TUKURITEを卒業した彼らが、さらに次の世代の作り手たちへ、想いを伝えていくに違いない。

※所属・肩書など掲載情報は取材当時のものです。