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デジタルとアナログが融合! 先進的な「探究型学習」が切り拓く、新たな学びのカタチ〜「青翔開智中学校・高等学校」事例レポート〜

鳥取県鳥取市に位置し、鳥取県東部地区初の中高一貫校として2014年に開校した「青翔開智中学校・高等学校(以下:青翔開智)」。現在、中高合わせて186名の生徒が学ぶこの私立共学校では、「探究型学習」を中心に据えたユニークな学びが行われています。開放的で斬新な空間設計、ICTと図書を融合させた教育手法、教員と生徒のフラットな関係性......。青翔開智が切り拓く、学びの未来をレポートします。

左手にiPad、右手には本を。校舎のすべてが学びの場になる

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ガラス張りのファサードを抜けて校内に足を踏み入れると、そこにはこれまでの「学校」に対するイメージを覆す"新たな学びの空間"がありました。校舎の中央に位置する「BOOK Base(ラーニングセンター)(写真左上)」には大きな吹き抜けの下にいくつもの書架やソファが配置され、その周囲をぐるりと取り囲むようにガラス張りの教室や職員室が並んでいます(写真右上)。校内を歩くと、カラフルなスツールやテーブルが配置されたオープンスペースや、ホワイトボードや可動式家具を備えた大小のゼミ室が目に飛び込んできます(写真左下)。校内の廊下や壁などの至るところに無数のブックスペースが設けられていることも印象的です(写真右下)。

 

「従来の学校では校舎の中に図書室があるのが一般的ですが、青翔開智のコンセプトは"図書館の中に学校がある"。校内の随所にその空間と呼応するような図書資料が配架されているため、生徒たちは学校生活のさまざまなシーンで本を活用できる仕掛けになっています。また、書籍や教科書などのアナログインフォメーションと、ICTを活用したデジタルインフォメーションの融合も、本校が積極的に取り組んでいるテーマのひとつ。生徒一人ひとりがiPadを所有し、校内全域でインターネットに接続が可能です。つまり、生徒たちは学校のどこにいても、本やインターネット、データベースを通じて複合的に学びを深めることができるのです」と、設立準備室室長として同校のコンセプトメイキングやICT活用推進を手がけてきた織田澤博樹副校長は語ります。

 

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先進的なIT企業のオフィスのような雰囲気を持つ青翔開智の校舎。始業のチャイムが鳴ると、「校内のどこにいても学びを深められる」という織田澤副校長の言葉を象徴するような風景が、校内の至るところで垣間見られました。教室で可動式デスクを向き合わせてグループワークを行う中学1年生(写真左上)やiPad片手に調べ物に取り組む高校2年生(写真右上)をはじめ、階段状のプレゼンテーションルームで英語の講義に聴き入る高校1年生(写真左下)、BOOK Baseでさまざまな図書資料を広げながら議論する中学3年生(写真右下)......、生徒たちの表情は明るく、多くの生徒が活き活きと発言しています。「授業は教室で受けるもの」という固定観念にとらわれず、校舎全体を舞台にデジタルとアナログを行き来しながらアクティブに学習する。青翔開智には、そんな自由で新しい学びのカタチが息づいていました。

探究型学習を中心に据えた、新しい学校をつくる

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横井司朗理事長・校長(写真右)、織田澤博樹副校長・チーフプランナー(写真左)

 

「調査や研究、発表といったプロセスを通じてひとつのテーマを掘り下げていくことが探究型学習の特徴。この教育手法を鳥取にも導入したい。そんな想いが青翔開智の出発点にあります。これからの社会で活躍する人材には、知識だけでなく実践力や問題解決能力、情報分析力、プレゼンテーション能力などが求められます。私たちは探究型学習をプレ大学と位置づけており、知識伝達型の一斉授業では育成することが難しい創造力やコラボレーション力、論理的思考力、批判的思考力、情報収集・編集力などを養える教育手法だと考えています。本校設立にあたって最も重視したのは、ICTと図書を融合した独自の探究型学習を実現できる教育空間をつくることでした」

 

ICTと図書を融合した探究型学習。その教育思想のシンボルとなる空間が、同校の中心に位置するBOOK Baseです。書架にはジャンルごとに分類された図書資料がずらりと並び、生徒が必要とする図書は100万冊もの蔵書を有する「鳥取県立図書館」から取り寄せることも可能。また、新聞検索システムを使った情報収集や、スカイプを活用した国内外専門家とのコミュニケーションなども盛んに行っていると横井校長は話します。

 

「学外の大学の先生に意見を聞いたり、海外のネイティブスピーカーと英語で話したり......。鳥取にいながら最前線とつながった授業ができるのは、ICTならではの利点だと思います」

探究型学習を通じて、学びの楽しさや自分の可能性を探る

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同校では、中学1年から高校2年の前期までの4年半にわたり、週2時間の「探究」の授業を実施。中学1年から中学2年の前期は、デザイン思考やフィールドワークを通じた「クリエイティブ探究」(写真左上・右上)、中2の後期から高1前期には論文入門やゼミ活動を行う「アカデミック探究」(写真左下)、高1後期から高2前期を生徒がそれぞれの課題を研究し、論文を発表する「パーソナル探究」(写真右下)という3つのフェーズに分けて展開しています。

 

「たとえば昨年のクリエイティブ探究では、中学1年生が4~5名ずつのチームに分かれ『鳥取市に魅力的なテーマパークを創ろう』という課題に取り組みました。生徒たち自身がグループワークで付箋やホワイトボードを使ってアイデアを出し、iPadを手にフィールドワークに出かけ、収支計画を作成し、最終的には保護者や外部の方へのプレゼンテーションを通じてフィードバックを得る。なかには発表が高い評価を得て、鳥取市内の名門ホテルへ再度プレゼンに呼ばれたチームもありました。0から1を生み出しデザインするクリエイティブ探究は、考えることの楽しさや実践力を養う絶好の機会。生徒にとって、大きな刺激になったのではないかと思います」とは、織田澤副校長。

 

さらに「探究型学習は進路の探究でもある」と横井校長は付け加えます。

 

「パーソナル探究では、生徒が自らテーマを設定し、修了論文を著述しますが、探究のテーマと将来の希望の進路がリンクする生徒がとても多いのです。たとえば論文のテーマに歴史を選んだある生徒は、京都大学で歴史を学ぶことを目標としています。また、ロシア文学をテーマに論文を書いた生徒は、大学でもロシア文学を学びたいと決心しました。自分のやりたいことややれることが自ずと絞り込まれ、将来について生徒一人ひとりが真剣に向き合うことも、探究型学習の面白い点かもしれません」

 

パーソナル探究の授業中の高校2年生に尋ねてみると「将来の夢が社会科の教員になることなので、修了論文のテーマは『どのようにすれば歴史に対する好奇心が働くのか』にしました。修了論文を書くのは難しいですが、必要な本がすぐに手に入るし、疑問に思ったことはすぐにiPadを使って調べられる。先生にもすぐに相談できる環境なので、いろんな視野から物事を見ながら論文を進めることができます」という答えが返ってきました。

 

教員と生徒の関係性が、探究型学習を加速させる

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独自の探究型学習を軸とした学びを支えているものとは何か。そのカギは「教員と生徒の関係性にある」と織田澤副校長は話します。

 

「従来の一斉型講義とは異なり、探究型学習では生徒との多様な関わり方が教員に求められます。たとえば、スタート時にはトップダウン型の『リーダー』として振る舞う姿を見せることも大切ですし、グループワークを進める際には『仲間』のような存在でいるのが望ましい。また、ある程度学習が進行したフェーズでは、生徒の自主性に任せて『裏方』に徹することが必要です。結果的にいえば、私たちはリーダー2:仲間3:裏方5くらいのバランスで探究型学習に関わっていると思います。特にクリエイティブ探究の場合、教員主導で進めてしまうと生徒の自由な発想を損ねてしまうこともある。だからこそ、生徒が自分の考えを素直に伝えられる関係性を築くことが重要なのだと思います」

 

校内には、教員と生徒の距離感を近づけるための空間的な仕掛けが、随所に施されているといいます。

 

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「たとえば職員室や校長室をガラス張りにし、試験期間以外は出入りを自由にしています。お互いの表情や気配を感じられる風通しの良い空間で、実際、中学1年の生徒が校長に『校則こういう感じにしたいんですけど』と直談判に来たこともあるほどです(笑)。また、細かな点ですが教員室のロッカーの上部が腰掛けられるようになっていて、ここに生徒が座るとちょうど教員を見下ろすような位置関係になります。生徒と教員の心理的関係は、どうしても教員が上になってしまいがち。物理的に生徒をちょっと上にすることで、フラットな関係性をつくれるのではないかと考えたのです(写真)」

 

校内の随所に可動式のテーブルや椅子、ホワイトボードを配置することで"どこでも学べる環境"をつくったことも、生徒と教員双方の自由を引き出すための工夫だと織田澤副校長は続けます。

 

「学ぶ場所や授業の進め方についてのルールは、あえて設けていません。学校の主役は生徒と教員。双方とも本来は面白い授業をやりたいわけですから、それぞれの自主性を尊重し、一緒の空間で学び合うことを開校以来大切にしています」

 

最後に、織田澤副校長に今後の展望を伺うと「開校以来、既存の学校教育の枠組みを取り払うような試みを、がむしゃらにやってきました。今後はこの2年間で経験した"学びの在り方"を体系化し、その上でどのように発展させられるのかを考えてみたいですね」という答えが返ってきました。

 

ICTと図書を融合させた独自の探究型学習を軸に、ユニークな学校づくりを行ってきた青翔開智。従来の「学校観」を心地よく裏切るような数々の挑戦は、今後どのような形で実を結んでいくのでしょうか。同校が切り拓いた新たな学びの可能性は、きっと学校教育の未来を指し示す、ひとつの羅針盤となるでしょう。

 

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