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学生生活を充実させる、"生きた学びの場" ~「関西学院大学 アカデミックコモンズ」事例レポート~

1889年の創立以来、関西を代表する名門校として知られてきた関西学院大学。兵庫県三田市にある神戸三田キャンパスは、理系の理工学部と文系の総合政策学部の2学部が使用する、美しい郊外型のキャンパスです。およそ5000人の学生が学ぶこのキャンパスに「アカデミックコモンズ」があります。今回は、多様な学びの場を支えるラーニングコモンズの先進事例としても注目されるアカデミックコモンズに込められた“想い”と“今”をレポートします。

2年を費やしコンセプトと立地を検討

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吹き抜けの下に広がる約800㎡もの「アクティブラーニングゾーン」と、その周囲を取り囲むように配されたいくつもの学びの空間−−−−−。アカデミックコモンズの館内に足を踏み入れると、ホワイトボードの脇で議論を交わすグループや一人で課題と向き合う男子学生、文庫本片手にバスを待つ女子学生......など、さまざまな学生の姿がありました。

 

関西学院大学神戸三田キャンパスの敷地のほぼ中央に位置し、4080㎡の空間を有するアカデミックコモンズ。2013年に完成した同施設の建設プロジェクトのスタートは、2009年にまで遡るといいます。

 

「プロジェクト発足から1年間は、コンセプトの策定に時間を使いました。海外の成功事例をそのまま輸入してもうまく機能するとは限らないし、箱モノだけ造って上手く活用されない事例もあると聞いていました。神戸三田キャンパスらしい"生きた学びの場"を創るためにも、プロジェクトの指針を固めることが何よりも大切だったのです。そして、先進事例の研究や議論を通じて辿り着いたのが『"学習"と"憩い"と"学生活動"の融合』というコンセプトでした」とは、関西学院大学神戸三田キャンパス事務室課長の中谷良規さん。

 

神戸三田キャンパスは市街地から離れた郊外型のキャンパス。ほとんどの学生が一日の大半を学内で過ごすため、“学習”だけでなく、“憩い”や“学生活動”を支える空間であることが必要だったと中谷さんは言います。そして、1年目に生まれたこのコンセプトを実現するための立地の検討が、プロジェクト2年目の課題。

 

「神戸三田キャンパスは、理系1学部と文系1学部が共存する全国でも珍しいキャンパスですが、これまで両学部が交流する機会は多くありませんでした。学部を超えたコミュニケーションを生む交差点のような場所を作りたい−−−−−。そんな思いからアカデミックコモンズをキャンパスの中心に設置することを決めました。さらに、キャンパスへのアクセス拠点であるバスターミナルをアカデミックコモンズの目の前に集約することで、多くの学生にとってこの場所が、学生生活の起点になればと考えたのです」

コンセプトを体現するための、空間とルールの設計

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2年の歳月をかけて丹念にコンセプトと立地を決めたアカデミックコモンズの建設プロジェクト。続く3年目はコンセプトを実現するための仕掛けや空間の具現化が主なテーマだったと中谷さんは話します。

 

「『"学習"と"憩い"と"学生活動"の融合』をテーマにキャンパス内で行われている学生たちの活動を洗い出してみると、そこには5つの学びのサイクルがあることがわかりました。それが『出会う』、『気づく』、『深める』、『形にする』、『共有する』という異なる個性を持った"学びのカタチ"です。アカデミックコモンズには、この5つの"学びのカタチ"を実現するための空間を配置することにしました」と中谷さん。

 

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(引用元:アカデミックコモンズでしかできない100のこと。)

 

たとえば、広々としたスペースのなかに可動式の椅子や机が配された「アクティブラーニングゾーン」は、新たな人や知識に「出会う」場所。たとえば、120インチのプロジェクターを備えた「シアター」はプレゼンテーションなどを通じて学びを「共有する」場所...‥など。一つひとつの空間の役割や仕様を確定。また、学生が自由に使用でき、お互いに刺激を与え合える場であることを目指し、極力壁や仕切りを廃したオープンな空間とすることなども決められたそう。

 

さらに、4年目には職員・教員がともに参画する「アカデミックコモンズ活性化委員会」を立ち上げ、施設を運用する上でのルール作りや空間活用法など、ソフトの部分を議論していったといいます。

 

「アカデミックコモンズ活性化委員会では、学生の知的好奇心を刺激するためのプログラムの企画なども行っています。たとえば過去には、アクティブラーニングゾーンを使って巨大なフラードームを制作するワークショップなどを実施しましたが、こうしたプログラムへの参加を通じて、学生たちは『こんな使い方をしてもいい空間なんだ』ということを理解してくれます。また、手を動かし、議論を交わすことで生まれてくる新たなアイデアや人々を"つなげる"ことや"押し上げる"ことも、我々の役割だと考えています」とはアカデミックコモンズ活性化委員会・コンビーナーの理工学部巳波弘佳教授です。

風通しの良い、学びの空間

大きな吹き抜けを持つ2階建てのアカデミックコモンズ。学生たちが思い思いのスタイルで学ぶこの空間には、学生たちの学びを支えるための工夫が詰まっています。たとえば、メインとなる800㎡のアクティブラーニングゾーンは、昼食を摂りながら仲間とコミュニケーションをとれる飲食可能エリアと、より集中した雰囲気で議論を交わせる飲食禁止エリアに分けられています。空間に仕切りはなく、可動式の机や椅子、ホワイトボードを使って学生たち自身が自らの"学び"にあった空間を創り出しています。座席数は各エリアともに80席ほど。学生たちが自由に動ける動線を確保できるようにと、少なめになっているといいます。

 

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「実験班のメンバーで、生命科学の実験レポートをまとめています。みんなと話しながら勉強できるのがありがたいですね。授業と授業の合間はほとんどアカデミックコモンズにいます。昨日は閉館時間の夜10時までここにいました」とは、理工学部に入学したばかりの1年生(写真左)。また、そのすぐ近くでは、総合政策学部の4年生が、アカデミックコモンズで自らアクティビティとして企画する写真展の準備をしていました。「アフリカのザンビアでボランティアをした際の写真を展示するイベントを考えています。以前にも映画をテーマにしたイベントをここで開催したことがありますが、普段は交流の少ない理工学部の学生ともコミュニケーションできるのも魅力です」(写真右)

 

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館内にはこのアクティブラーニングゾーンを取り囲むように、カフェのようにくつろげる「クレセントラウンジ(写真左上)」や大学院生が常駐する学習相談エリア「クレセントチューター(写真右上)」、英語版のコミックや留学に関する資料が置かれた「グローバルコーナー(写真左下)」、いつもとはちょっと違う雰囲気でディスカッションできる和室空間「新月の間(写真右下)」など、多彩な空間を配置。間仕切りや壁が少ないオープンな雰囲気も、学生が互いに刺激しあえる環境を生み出すための工夫のひとつ。また、あくまでも学生主体の授業外学習の場とするため、アカデミックコモンズを使った授業は実施していないといいます。アカデミックコモンズの総座席数は500ほどですが、日中はほぼ満席なのだそう。

 

「年々アカデミックコモンズを利用する学生は増えていると感じています。オープンアクセスの施設なので入館者数はカウントしていませんが、パソコンの貸し出しだけでも年間全学生の半数となる2500名が利用。実際の入館者数は、それ以上ですね。事務室が『アカデミックコモンズ』に移ってからは、学生との距離が近くなったと感じています。事務室と学生空間を仕切る壁は、全面ガラス張り。学生と職員が、常にお互いを意識しながら活動しています。学生たちの顔や日々の活動を間近に見ながらコミュニケーションをとれることは、私たち職員にとっても大きなポイント。学生も、事務室を以前よりも身近な存在として感じてくれていると思います」と中谷さんは言います。

成長と挑戦を育む、プロジェクトルーム

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2階にある「プロジェクトルーム」もアカデミックコモンズの取り組みを象徴する空間のひとつ。ここでは、チャレンジ意欲や新規性、発展性等といった一定の審査基準を満たしたプロジェクトグループが1年間を通じて座席や設備を確保。プロジェクトメンバーの学生たちは自分達の意志で自由にこの場所に集い、学び、それぞれの活動に取り組んでいます。

 

2015年に行われたプロジェクトは、小中高生などの初心者を対象にプログラミングのワークショップなどを企画・実施する「feel learning 感学」やプロジェクションマッピングなどを駆使したイベントを開催する「Projection team SHADECOR」、体験型の国際交流ワークショップを展開する「体験型国際交流体験団体PIECE☆」など、学内・学外を巻き込んだ活動が多数。2016年は11ものプロジェクトが始動しているといいます。

 

「自分たちで設定した明確なゴールに向かって、メンバーとともに協働し、挑戦していく。そのなかで、チャレンジ精神やコミュニケーション能力、自主性、考える力などが養われていくのだと思います。アカデミックコモンズは、授業でもサークルでも部活でもない、新たな"学びの場"になっています。今後は在学中に起業するような学生も、増えていくのではないでしょうか。神戸三田キャンパスは、"企業のゆりかご"のような場所になる可能性を持っていると思います。いつか、大学の研究開発成果と社会をつないで世界を変革するような企業が生まれれば、最高ですね」と巳波先生は話します。

 

『"学習"と"憩い"と"学生活動"の融合』をコンセプトに、多彩な空間が配されたアカデミックコモンズ。学生たちが学び、出合い、交流し、挑戦するこの場所は、まさに"生きた学びの場"として利用されています。

 

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