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多様な学びをシームレスにつなぐラーニングコモンズ ~「千葉大学附属図書館」事例レポート~

書籍や電子資料と向き合う“自学習”のほか、グループワークやディスカッションを通じた“協調学習”、や“情報リテラシーやアカデミックスキルの育成”など、大学図書館には、多様な学びのカタチを支える「ラーニングコモンズ」としての役割が求められています。今回は「千葉大学附属図書館」の事例を通じて、学生一人ひとりの学びを支える図書館の在り方を考えます。

新たな学習スタイルとして定着したアクティブラーニング

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90%というデータが物語るように、ラーニングコモンズはすでに大学教育に欠かせない空間となっています。ちなみに、ラーニングコモンズがオープンキャンパスの見学コースになっている割合は74%。大学内外へのアピールにも一役買っています。

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ラーニングコモンズが設置されるエリアとして最も多いのが、図書館。その割合はなんと61%にも上ります。そのほかのエリアとしては全学共有エリア(21%)、食堂に隣接(6%)、ラウンジに隣接(6%)などが挙げられます。

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71%もの大学で、キャンパス内の学生数に対するラーニングコモンズの席数の割合が3%未満にとどまっています。多くの大学では、まだまだ充分な席数が確保されているとは言えない状況にあるようです。

“学習とコンテンツの近接”で、能動的な学習を促進

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千葉大学は、千葉県内に4つのキャンパスを持つ国立の総合大学。メインキャンパスとなる西千葉キャンパスの広大な敷地のほぼ中央に、附属図書館とアカデミック・リンク・センターが一体となった「アカデミック・リンク」があります。4つの建物からなる図書館は、延べ床面積1万5808㎡、蔵書冊数約100万冊、閲覧席数1423席。旧来の大学図書館の改修をきっかけに、空間の増改築や新築を行った同館が、現在の形になったのは2014年のこと。ガラス張りのおしゃれな館内に一歩足を踏み入れると、エントラス付近のオープンスペースでプレゼンテーションをする院生や2階のコミュニケーションエリアでテーブルをつなげてディスカッションするグループ、ガラス張りの静かな閲覧室で論文を熟読する学生などの姿が。そこには実にさまざまな学びのカタチがありました。

 

「『千葉大学附属図書館』は、千葉大学が掲げる新たな教育・学習コンセプト“アカデミック・リンク”の中核をなす“場”として設計された図書館。そして、このコンセプトを追求するために発足した研究開発組織が『アカデミック・リンク・センター』です。“アカデミック・リンク”が志すのは、“コンテンツと学習の近接”による能動的な学習の促進によって、“考える学生”を育成すること。具体的には快適な『学習空間』と、学習に役立つ書籍や電子情報などの『コンテンツ(資料群)』、そして、資料の利用や学習を支える専任の教職員や学生スタッフなどの『人材』。これら3つのエッセンスをつなげることで、学生のあらゆる学習スタイルに対応する環境の構築を目指しているのです。」と語るのは、千葉大学アカデミック・リンク・センター特任助教の小野永貴さん。

役割の異なる4つの建物を、回遊しながら学習を深める

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多種多様な学習スタイルに対応する、新たな学習環境の構築―――。その思想は、空間設計にも顕著に表れています。たとえば、図書館を構成する4つの建物には、L棟(Learning/黙考する図書館)、I棟(Investigation/研究・発信する図書館)、N棟(Networking/対話する図書館)、K棟(Knowledge/知識が眠る図書館)と、それぞれに異なる役割とコンセプトがあります。

 

「たとえば、N棟は4フロアすべてが『コミュニケーションエリア』や『プレゼンテーションスペース』、『グループワークエリア』などで構成されたアクティブラーニングスペースになっています。ただし、アクティブラーニングだけで学びが完結するかというと、もちろんそうではありません。ディスカッションのためには、一人でじっくりと書籍や論文と向き合うこともあれば、学生同士で相談することも、パソコンを使って資料を作ることもありますよね。すべての学びがつながっていると思うのです。『千葉大学附属図書館』の大きな特徴のひとつが、個人スペースやグループスペース、コンピュータスペース、資料スペースなどを壁で仕切らずに、シームレスにつないでいること。だからこそ、学生がそれぞれの空間を行き来しながら、幾つもの学習プロセスを回遊できるのです。」(同)

“見る“、”見られる“ことが、知的好奇心を刺激する

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ICTの発達などにより、大きく変化する大学教育のカタチ。「千葉大学附属図書館」には、多様化する学習スタイルをサポートしながら、学生たちの知的好奇心を刺激するための工夫が、随所に凝らされています。

 

たとえば、教員や学生が講演や発表などを行う「プレゼンテーションスペース」は、あえてエントランス近くのオープンなスペースに設置。図書館の外を歩く学生がガラス越しに「面白そう!」と興味を持ち、図書館を訪れることも多いそう。またN棟4階にある全4室の『グループ学習室』も、全面ガラス張り。室内で行われるディスカッションやグループワークの様子は、室外からも見ることができます。

空間の“余白”が自由な学びを引き出す

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活発な議論が交わされる「グループワークエリア」から、しんと静まり返った「静寂閲覧室」へ。さまざまな個性を持った空間が、グラデーションを描くようにゆるやかにつながっており、各空間の教育家具も実にさまざまな個性を持っています。たとえば、L棟の「コミュニケーションエリア」には正方形や正三角形、台形などさまざまな形状をした可動式のテーブルが並び、キャスター付きの椅子やホワイトボードが随所に置かれています。また、カフェのように開放的なL棟の「ラウンジ」には、柱を利用した書架や深々と腰掛けられるソファなどが並びます。

 

「多様な家具を配置することで、学生たち自身が『空間をどう使うか』ということを考え、それぞれの使い方を“発明”してくれるのです。画一的な学習空間を押し付けるのではなく、ある程度の余白を残しておくことも、とても大切だと思います。もちろん家具や空間だけでなく、館内の利用ルールなども決め込み過ぎないほうが良いと考えています。禁止事項ばかりを増やすのではなく、まずは学生自身の自主性にまかせてみる。そうすることで、多種多様な学習スタイルに寄りそう空間になるのではないかと思います。」(同)

人々の試行錯誤が、図書館の可能性を拡げる

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電子情報の発展などによって利用者数を減らす図書館が多いなか、設立以来利用者が少しずつ増えているという「千葉大学附属図書館」。同館学術コンテンツ課副課長の庄司三千子さんは、日々の図書館運営のなかで一定の手応えを感じていると言います。

「グループ学習やディスカッションができる空間ができたことで、これまでファミリーレストランや自宅で学習していたであろう学生たちが、図書館に足を運ぶようになっています。また、学生一人ひとりの滞在時間も増えているように感じています。そのほかにも、学生が教員に『図書館のグループ学習スペースやプレゼンテーションスペースを授業に使ったら面白いのでは?』と提案する事例などもあります」(同)

館内の随所に、いくつもの工夫が散りばめられた「千葉大学附属図書館」。それらのひとつひとつは、図書館運営に関わる人々の試行錯誤の末にできあがったもの、と庄司さん。アカデミック・リンク・センターに所属する教員と図書館職員が協力して「アカデミック・リンク」の理念を実現させようとしている点も、同施設ならではの取り組みです。

「『アカデミック・リンク』の運営には、専任の教員をはじめ、学習支援や図書館業務などを行う職員、さらには約50名の学生スタッフが関わっています。空間や家具などの物理的な要素がどれだけ充実しても、人がいなければサービスにはつながりません。図書館運営に関わる人々が綿密に連携を取りながら、幾つものプロジェクトを走らせてゆく。そんなチーム体制も、現在の『千葉大学附属図書館』には欠かせないものです。」(同)

教育・学修支援の、専門職を養成するプログラム

2015年7月30日に文部科学大臣より、教育関係共同利用拠点に認定された「アカデミック・リンク・センター」では、今後、教育・学修支援の専門職を養成するプログラムなども展開する予定。「アカデミック・リンク・センター」の設立や運営で培った空間や人材養成ノウハウなども、カリキュラムに組み込まれる可能性があるといいます。新たな学びのカタチを追求し続ける「アカデミック・リンク・センター」。その知見が広く、全国に展開されることで、日本の大学教育の発展はさらに加速すると考えられます。

ラーニングコモンズに求められる、3つの空間的役割とは?

学生一人ひとりが机に向かって学習に集中する「静」のスペースから、グループ学習やプレゼンテーションを通じて学びを深める「動」の空間まで。ラーニングコモンズに求められるのは、多様な学習スタイルに対応するための3つの役割です。

“動”の学びを実現する、グループ学習+プレゼンスペース

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複数の学生が集まり、ディスカッションや発表を通じて学びを深める「グループ学習+プレゼンスペース」は、ラーニングコモンズの中で最もアクティブラーニング的要素が強い空間です。学生一人ひとりが机に向かって学習する「個人学習スペース」を“静”の学習環境とするならば、「プレゼンスペース」は活気あふれる“動”の空間。グループワークの発表やセミナー、講演などが行われるこのスペースには、少なくとも30人~40人を収容できるキャパシティが求められます。また、「FitMe三角形」のようにつなげて使えるテーブルや「Campus UP」のような可動式の椅子やホワイトボードなどを配置することで、空間にフレキシビリティを持たせるのもポイント。プレゼンテーションや講演を見やすくするために、階段状のベンチ席を設置するのも、取り入れたい工夫のひとつです。

“動”と“静”の利点を併せ持つ、リビングラーニングスペース

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「自学習」にも「グループ学習」にも使えるユーティリティを持つのが、「リビングラーニングスペース」です。オープンな書架に知的好奇心を刺激する本や資料が並び、ちょっとした調べ物にも活躍する「ライブラリースペース」や、リラックスした姿勢で議論やグループワークを行える「ソファベンチスペース」や、隣席との会話もできる窓際の「オープン学習スペース」などが、「リビングラーニングスペース」の代表的な空間。カフェのように明るく開放的な雰囲気を持つこの空間は、さまざまな学生の交流の場としても活躍します。共有モニターや可動式のホワイトボードなどを配置することで、グループワークをさらに活発にすることも可能。また、教職員やTAが常駐するサポートデスクを置くことで、学びの質をさらに高めることもできます。

 

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ライブラリースペース

 

授業に役立つ資料や季節の展示などに触れられるライブラリースペース。気軽に訪れることができ、学生同士のコミュニケーションの場としても活躍。

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ソファーベンチスペース

 

リラックスした雰囲気のソファベンチスペース。ノートパソコンなどを使ったグループ学習はもちろん語学の会話練習などにも活用できる。

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オープン自学習スペース

 

会話やPC使用も可能なオープン学習スペース。学生一人ひとりのペースで学習に取り組める。

“静”の学びをサポートする、集中自学習スペース

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「集中自学習スペース」は、ラーニングコモンズにおける“静”の学習環境です。空間を壁で仕切られた「個人学習スペース」は、飲食不可の私語厳禁がほとんど。周囲の雑音に気を取られることなく、研究や課題とじっくり向き合うことのできる空間です。「個人学習スペース」の入口に受付カウンターを設けることで、この空間を利用する学生をきちんと管理するのも大切なポイント。また、机上に設けられた仕切り板で一人ひとりのスペースを区切るラーニングコモンズ用テーブルの導入もおすすめ。さらに、複数の「個人学習スペース」を設置する場合、パソコンやタブレットの利用できるスペースとできないスペースを分けるなど、それぞれの学習スタイルに応じたルールを設けてみるのも良いでしょう。

あらゆる学習スタイルに対応する空間であること-――。“大学図書館の理想像”について訊ねると、千葉大学アカデミック・リンク・センター特任助教の小野永貴さんからは、そんな答えが返ってきました。“個”と“グループ”、“静”と“動”……など、ICTの進化や社会に求められる人材の変化に伴い学習スタイルが多様化する今、一人ひとりの学びのカタチに対応する“空間の許容力”こそが、ラーニングコモンズとしての大学図書館には求められているのかもしれません。

 

2015.12.24
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