コクヨファニチャー株式会社
コクヨの教育空間

空間の柔軟性こそが自発的な学びとコミュニケーションを育む「作新学院 作新 アカデミア・ラボ」事例レポート

栃木県宇都宮市の広大なキャンパスで、幼稚園・小学部・中等部・高等学校の幼児・児童・生徒たちがともに学ぶ「作新学院」。1885年の創立以来「文」「武」両面で活躍する多彩な卒業生を輩出してきた同校に、新たな学びの空間がオープンしたのは2017年4月のことでした。生徒の自主性を育み、学校と社会をつなぐ“窓”としての可能性も秘めた「作新 アカデミア・ラボ」。作新学院の新たなシンボルとして歩み始めた学びの空間をレポートします。

“未知の自分”に気付く、新たな学びの空間

K-002.jpg

大きな窓から自然光が心地よく降り注ぐ「作新 アカデミア・ラボ(以下:アカデミア・ラボ)」。台形型テーブルや勾玉型テーブル、可動式チェアがずらりと並ぶ2階の学習空間「クエスト・ラボ」では、高校3年生の数学の授業が行われていました。台形テーブル2つを組み合わせてのグループワークでは、中央に置かれたホワイトボードを囲んで生徒たちが対話しています。真剣にディスカッションをしているグループや、自分たちの考えをホワイトボードにまとめているグループなど……。オープンしたばかりの空間を、生徒たちは生き生きと使いこなしています。

_DSC7904.jpg

「アカデミア・ラボはオープンして間もないのですが、生徒の空間への順応性や創造力は、予想以上ですね。それぞれの生徒が自主的に試行錯誤しながら、空間や道具の使い方を編み出してくれている印象です。生徒に、この空間に対するアンケートを取ったところ『教室より席を移動しやすいので、いろんな人と話し合える』、『机やボードを自分の好きな位置に動かすことで、意見を交換しやすくなった』といった声が多数。実際に授業をしてみると、生徒たちの議論がとても活発に行われることに驚かされます。スタートからわずか1ヶ月ほどですが、アカデミア・ラボの滑り出しは上々ですね」とは、作新学院高等学校トップ英進部・英進部副部長の坂本芳信先生。

K-001.jpg

180席ほどのキャパシティを持つ「クエスト・ラボ」は、移動式間仕切りを使って、使用目的や人数に応じた空間を作ることが可能。すぐ隣には、コミュニケーション力や語学力の醸成を目的とした「ランゲージ・ラボ」も設置。この空間では、プロジェクターやタブレットパソコンなどのICT機器を使った学びも行われるといいます。

_DSC7781.jpg

「対話し、議論し、思考を深める……。アカデミア・ラボは、普段の教室では気付くことのなかった自分自身の表現を、新たに発見できる場所。授業や放課後の時間などにこの場所を利用した生徒たちにとって、『これまでの自分を超える』ことの楽しさを実感できる空間になればと考えています」(坂本先生)

K-003.jpg

 

生徒の思いが詰まった、理想のキャンパス

_DSC7914.JPG

高等学校だけでも「トップ英進部」、「英進部」、「総合進学部」、「情報科学部」の4つの部を有し、全国屈指の生徒数を誇る作新学院。大通りに面した登下校門を入ってすぐに位置するアカデミア・ラボは、開校131年を迎える同学の新たなシンボルとなっています。S字を描く流線型の建物は2フロアから成り、学習スペースの「クエスト・ラボ」や「ランゲージ・ラボ」、ライフ&イノベーションスペースの「ダイニング・ラボ」、歴史と伝統を物語る展示室「ライブラリー」など複数の空間で構成されています。実はこのプロジェクトのベースには、生徒から寄せられた“夢のキャンパス”への想いがあったといいます。

K-005.jpg

「開校130周年の節目を迎えるにあたり、4年半ほど前から理想のキャンパスの具現化を目指す『ドリーム・キャンパス・プロジェクト』を企画していました。その中心となるのが、かつて幼稚園の園舎が置かれていたこの場所の活用方法。そこで生徒たちにアイデアを募ったところ、1000通を超える応募が集まりました。そのなかで最優秀に輝いたのが、ライブラリーや購買部など複数の構成要素がひとつの場所に集まった『創造樹』というコンセプト。アカデミア・ラボではこのコンセプトをベースに、多くの生徒から寄せられた『最新の学習スペースがほしい』という意見なども取り入れ、空間をブラッシュアップしています」とは、トップ英進部・英進部副部長の水沼良浩先生。『ドリーム・キャンパス・プロジェクト』では、作新学院の新たなロゴやマスコットなども企画。マスコットの「さくしろう」のデザインを当時の在校生が手がけるなど、キャンパスづくりにおいても生徒の自主性を尊重しています。

 

また、プロジェクト進行中に新設されたトップ英進部の存在も、アカデミア・ラボの設計に大きな影響を与えているといいます。

 

「東京大学や京都大学、国公立大学医学部などへの進学を目的として創設されたトップ英進部。これらの最難関大学に求められるのは、受験知識にとどまらない教養や自発的な行動力・思考力です。もちろん生徒自身が主体的に考え、学ぶ姿勢はトップ英進部だけでなく、すべての生徒にとって必要なこと。だからこそ作新学院のヴィジョンを体現するアカデミア・ラボには、生徒が自主性を発揮し、自由にアレンジしていける空間であることが求められたのです」(水沼先生)

 

自発的な学びを誘発する、空間の“余白”と“柔軟性”

流線型のフロアにゆったりと配された可動式の椅子やテーブル、ガラス張りの外壁と高い天井がもたらす開放感、移動式間仕切りを活用することで少人数でのグループワークから300人規模のイベントスペースとしても使用できる2階のフロアレイアウト……。アカデミア・ラボには、随所に生徒の自主性を誘発するための仕掛けや工夫が散りばめられています。根底に通じるコンセプトは、使い方に応じて自在に変化するフレキシブルな空間であること。

 

「空間効率だけを考えれば、四角い机と椅子を整然と並べた既存の教室のようなレイアウトが最適なのかもしれません。しかし、それではどうしても空間としての多様性が失われてしまう。だからこそ、あえて用途を固定せず、“余白”や“柔軟性”のある空間を目指したのです」とは、空間プランを担当したトップ英進部・英進部学務主任の松本安史先生。フロアレイアウトだけでなく、照明の位置や選定家具の精査を行い、学びに必要なエッセンスを絞り込んだといいます。「家具の個数や形状、使い勝手などは、サンプルを取り寄せながらひとつひとつ検討。たとえば『ランゲージ・ラボ』では、空間のサイズに合わせて可動式テーブルの寸法をカスタマイズしています。その結果、教室の動線をしっかり確保しながら、既存の教室や自習室とは異なる個性を持つ、フレキシブルな学びの空間に仕上がったと感じています」とは、松本先生とともに空間プランを担当したトップ英進部・英進部学務主任の金山明子先生。

 

K-007.jpg

また、アカデミア・ラボで行われる教育プログラムの計画を手がけたトップ英進部・英進部の竹内正明先生と秋場伸子先生はこう話します。「自分で考え、自分で発表する。そのような自主的な学習スタイルを実現することが、アカデミア・ラボの役割。ですから、教師が生徒に『こう使いなさい』と指導することもありません。まずは授業を通じて空間にふれてもらい、その後はクラスメートとともに考えながら、それぞれの学びの形を発展的に創っていけるような場として活用していければと思います」(竹内先生)

 

「ICTを活用することで、世界と繋がれることもアカデミア・ラボの魅力。スカイプを使った海外との交流やネイティブの先生による英語のイマージョン教育なども実現していく予定です。教師と生徒がともにトライ&エラーを繰り返しながら、空間の可能性を探っていければと思います」(秋場先生)

K-004.jpg

人と人、学校と社会をつなぐ場所

_DSC7791.jpg

目的や用途によって自由自在に変化するアカデミア・ラボは、学習空間としてだけでなく、人と人、学校と社会を結ぶコミュニティスペースとしての役割も担っています。ダイニングスペースや大規模なイベントスペースを備えた空間は、地域やPTA、OB・OGなどの交流の場としても活用。作新学院と社会をつなぐ“窓”として機能することを想定しています。また、幼稚園から高等学校までを有する作新学院にとって、アカデミア・ラボにかかる期待は少なくありません。高等学校の生徒が小学部の児童に勉強を教えたり、難関国公立大学を目指す生徒と甲子園で優勝経験のある生徒が刺激を与え合ったり……。登下校門を入ってすぐという好立地に位置し、コンビニエンス・ストアーやカフェテラスなども備えるアカデミア・ラボでは、今後、学年や学部の垣根を越えた交流が育まれていくことでしょう。

 

生徒が自発的に学び、つながり、新たな価値を育んでいく場所。オープンしたてのアカデミア・ラボの柔軟で自由な空間は、多面的な広がりを持っています。この空間が、これから生徒の学びとともにどのように進化していくのか。そこには、今後の学校教育を考える上での大切なヒントがあるはずです。

 

 

 

2017.04.17
横浜市立富士見台小学校 職場環境改善プロジェクト 「Work Style × Work Place Seminar Ⅱ」イベントレポート
2017.06.26
キャンパスのなかの小さな"外国"!?  多様な語学学習を支える空間〜 「帝京大学 TeLaCo」事例レポート〜

ソリューション

  1. トップ
  2. トピックス
  3. 空間の柔軟性こそが自発的な学びとコミュニケーションを育む「作新学院 作新 アカデミア・ラボ」事例レポート
TOP