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9年間を通じた学びで、論理的思考力を育む~「つくば市立春日学園義務教育学校」事例レポート~

学校教育法の改正により、2016年各地に誕生した義務教育学校。小学校から中学校までの学びを一貫して行う義務教育学校は、義務教育の新たな形として注目されています。茨城県の「つくば市立春日学園義務教育学校(以下:春日学園)」は、先進的な取り組みで義務教育学校の可能性を切り拓くトップランナー。9年間を通じた学びで、児童や生徒の論理的思考力育成を目指す、同校の取り組みをレポートします。

ICTと対話を駆使した、活気あふれる授業

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2012年に茨城県初の施設一体型小中一貫校として開校し、2016年4月に日本初の義務教育学校のひとつとなった春日学園。1年生から9年生まで合計1849人もの児童・生徒が学ぶ同校に足を踏み入れると、広々とした廊下の奥に続く教室で、さまざまな授業が展開されていました。

 
つくば市が運用するインターネットを使った学校家庭学習支援システム「つくばチャレンジングスタディ」を使ってタブレットで数学の問題を解く4年生(写真左上)、電子黒板とタブレットPCが連動した学習支援システム「スタディネット」を使いながらグラフの活用方法について学ぶ6年生(写真右上)……。ICTを駆使して行われるそれぞれの授業は、いずれもスピーディーで活気あふれるもの。頻繁に意見が飛び交う様子からは、単にデジタルツールを用いるだけでなく、児童と児童、児童と先生のコミュニケーションを重視していることが伝わってきます。たとえば、電子黒板を使いながら「公共施設と自然の関係性」についてのグループレポートを発表する3年生の授業(写真下段)では、電子黒板を活用しながら一人ひとりの児童が実に堂々と意見を発表。3年生とは思えないほど整理されたプレゼンテーションに、ついつい引き込まれてしまいます。
 
義務教育の可能性を切り拓く春日学園。この場所で日々行われる学びには、どのような哲学があるのでしょうか。
 

すべての学びは、論理的思考を育むために

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小学校・中学校の9年間を通じて、一貫した教育を行えることが義務教育学校の特長。春日学園には、9年間の学びのロードマップを描く上で指針となるビジョンがあります。

 
「私たちが教育のテーマとしているのは、9年間の継続的な学びを通じて『論理的な思考力』を育むこと。学習環境や指導方法、ICTを始めとする学習ツールなどは、すべてこのテーマに沿って考えられています」とは、同校の片岡浄校長(写真上)。従来の暗記型の教育ではなく、すべての学びの基礎となる“考える力”を高めることこそがこれからの時代には必要。だからこそ同校では、既存の授業にとらわれず、日々新たな学びに挑戦しているのだといいます。
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「論理的な思考力」を育むこと。このテーマを象徴するのが、1年生から9年生まですべての児童・生徒が使う「思考ツール」(写真上・下)です。同校創立2年目に導入された思考ツールとは、「比較する」、「分析する」、「関連付けする」といった思考の過程をベン図やボーン図などで可視化するフレームのことです。

 

「たとえば、ベン図を使って比較しながら、『一方では』や『どちらも』といった論理的な言葉を使って物事を考えていくことで思考の過程が可視化され、児童・生徒は自分の考えの筋道や問題点を理解しやすくなります。こうした学びを9年間続けていくことは、『論理的な思考力』の育成につながると考えています。もちろん思考ツールのほかにも、学習意欲を喚起するためにビデオ映像を使ったり、タブレットを使って一人ひとりの考えを共有したり……。授業によってさまざまな工夫があります。これらのすべてが『論理的な思考力』を身につけるための道具立てなのです」(片岡校長)
 
春日学園ではICT活用の自主研究や全学年を通じた教科ごとの研究部会なども頻繁に開催。目指すべき学習成果に、「論理的な思考力」という明確なテーマがあるため、100名を超える教職員間での意思の疎通もスムーズなのだといいます。
 
設立当初、全国平均程度だったという春日学園の学力ですが、直近の全国学力・学習状況調査では全国平均よりも10数ポイント高い結果に。しかも、B問題(記述)の答案には無回答がほとんどなかったと言います。この結果が、児童・生徒の「論理的な思考力」や「書こう」という意欲が、着実に育まれていることを物語っています。
 

9学年がともに学び、「人と豊かにかかわる力」を育む空間

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入学したばかりの1年生から制服姿の9年生まで、さまざまな学年の児童・生徒がひとつの空間で学ぶ春日学園。自然光が差し込む開放的な校内を歩けば、空間の随所に学年を超えた交流を生むための仕掛けが施されていることに気づきます。

 
たとえば教室の壁は見通しの良いガラス張りで、廊下を歩けばさまざまな学年の生活風景が感じられる設計です(写真左上)。また、多目的教室や音楽室、1年生の教室は通常よりも広く、学年をまたいだ交流が行いやすい空間となっています。さらに、ライブラリーは全学年共通となっており、読書の時間を通じて他学年と接する機会を演出しています(写真左下・右下)。
 
「9学年が一体となって交流できるのが、義務教育学校の大きな特長。低学年は高学年の姿を見ながら未来の自分を想像することができますし、高学年の子供たちは低学年の目を意識するので自らの行動に責任を持つようになる。縦割りのグループで行う掃除の時間は、高学年ほどサボれないですからね(笑)。これまでの6・3制では、小学校から中学校に進学する際の環境の変化が不登校や学力不振を招く“中1ギャップ”の問題がありましたが、9年間を同じ環境で過ごす義務教育学校ではこうした問題がありません。また、春日学園では毎年クラス替えをすることで、学級内での序列の固定化などの問題も起きにくくなっています。さまざまな個性や年齢の児童・生徒がともに学ぶことで、『論理的な思考力』に並ぶ春日学園のテーマである『人と豊かにかかわる力』も育まれていると感じています」(片岡校長)。
 
長期的な学びのロードマップを描くことの大切さ。異学年との交流が生むコミュニケーションの豊かさ。論理的な思考力を身につけるための工夫。9学年1849人の児童・生徒がともに学ぶ春日学園は、義務教育の未来を切り拓く事例のひとつといえるでしょう。
 

 

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