自治体庁舎とユニバーサルデザイン

1回 自治体庁舎のUD3要素

 自治体の庁舎には、さまざまな人が訪れます。たとえば独り暮らしを始めた学生が手続きをしに来たり、お年寄りが高齢者タクシーチケットを受け取りに来たり...子ども連れや障がい者、外国人など、みんながそれぞれの目的で庁舎を利用します。
それら多くの人々にとって自治体の顔となる庁舎は、誰にとっても気持ちよく利用できるものでなければなりません。
そこで重要になるのが、ユニバーサルデザイン(UD)の考え方です。このコラムでは、「ユニバーサルデザインとバリアフリーのちがい」など基本的な内容からはじまり、「自治体庁舎におけるユニバーサルデザインの3要素とその中身」について、計4回にわたってご紹介します。

ユニバーサルデザインとバリアフリーのちがい

 ユニバーサルデザインという言葉は最近様々なシーンで使われており、すでに一般的になっていますが、ここで少しおさらいしておきます。
ユニバーサル(universal)とは英語で、すべてに共通であるさま、普遍的、という意味。つまりユニバーサルデザインとは、誰にとっても共通して使いよいデザイン、ということになります。

ユニバーサルデザインという言葉は、自身も障がい者だったアメリカのノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏が提唱しました。メイス氏は、特別に用意された障がい者用のデザインが、かえって障がい者にとって心理的な負担にもなることから、最初から多くの人に使いやすいものをデザインすれば、誰にとっても気持ちよく利用できるものになると考えたのです。

 一方、ユニバーサルデザインとよく似た考え方に、バリアフリーがあります。バリア(barrier)とは障壁や防壁、障害物のことで、ここでいうバリアとはつまり障がい者や高齢者が生活していく上で障壁となる物理的な障害を指します。バリアフリーはそれらの物理的な障害を取り除き、障がい者や高齢者が生活しやすい環境を整備しよう、という考え方です。
ユニバーサルデザインがすべての人を対象とするのに対し、バリアフリーは障がい者や高齢者のように特定の人を対象にしているところが異なります。

 庁舎窓口の待合ロビーを例に、バリアフリーとユニバーサルデザインそれぞれの対応の違いを具体的にご説明します。
まず、バリアフリーの考え方では、車イス<専用>の待合コーナーを設けるという対応になります。
一方ユニバーサルデザインの考え方では、ロビーチェアーの配置を工夫して、待合ロビーの<中に>車イスの利用者も利用することができるスペースを空けておく、という対応になります。この2つの対応の違いは、車イス利用者にとって心理的に大きな違いとして感じられるのです。

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 ユニバーサルデザインに配慮した待合。向かって左側の最前列のロビーチェアーが後ろのロビーチェアーよりも短くなっており、車イスの利用者もこの位置で待つことができます。ロビーチェアー自体も、背もたれや肘に工夫がある、ユニバーサルデザイン対応のロビーチェアーが配置されています。(画像:さいたま市南区役所 区民課待合)

 ユニバーサルデザインは"最初から誰にとっても使いやすいデザインであること"なので、新庁舎を建てる場合などは計画段階からユニバーサルデザインを意識して計画していく必要があります。出入口にスロープを設けたり、トイレを「だれでもトイレ(多目的トイレ)」にするのは建築におけるユニバーサルデザインです。では、既存の庁舎で窓口の改修を考えるような場合には、ユニバーサルデザインは取り入れられないのでしょうか?
決してそんなことはありません。新庁舎でなくても、利用者に対する気遣いは可能です。コクヨは自治体庁舎のユニバーサルデザインには、3つの要素があると考えています。それは、

(1)サイン
(2)動線
(3)家具

の3つです。次回以降は、この3要素について詳しくご説明します。

(作成/コクヨ)

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