【特別連載コラム】地方自治体職員の"働く場"のこれから

6回 これからのオフィスの役割一体感を生むオフィス

京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 デザイン・建築学系 仲隆介教授

-第5回では、エンゲージメントが高まるオフィスの事例を教えていただきました。テレワークの導入なども進んでいますが、やはりこれから「働き方改革」の変化に合わせてオフィスもその役割を変えていくべきでしょうか。

仲教授:西予市でABWを導入したように、今はツールも日々便利になり、オフィス以外で働くことも増えてきました。だからこそ、同じ目的を持つ人たちがオフィスという同じ場所で働いているという瞬間に対する価値は、今まで以上に高まっていると思います。テレワークしているときでは感じられない場の力です。一体感やその場のノリは、オフィス以外では感じられません。 言い換えるとオフィスの役割は、いかにしてそこで働くワーカー達に一体感を持ってもらうかということです。それは組織との一体感であり、あるいは同僚との一体感のことです。

-さきほど出てきた、エンゲージメントという考え方と同様ですね。

仲教授:会社の最終ゴールをオフィスによって見える化すると、働く人に与える影響が大きい。このために働くんだと日々感じることができる。場がエンゲージメントに与える影響は非常に強いのです。場には、組織間のコミュニケーションをコントロールできる可能性が備わっています。

-オフィス改革の動機のひとつが、コミュニケーションの活性化というケースが多いです。

仲教授:オフィスとコミュニケーションとの関係で面白い例があります。フェイスブックの本社オフィスのつくりは非常にオープンです。社員はオープンで広いフロアの中、プロジェクト単位で働いています。彼らはプロジェクトがうまくいくと、わっと歓声を上げて喜びます。それは周囲のワーカーに聞こえますから、「何なに、どうしたの?」と自然に人が寄っていく。成功で高揚した空気は伝播していき、それぞれの仕事へのモチベーションに影響を及ぼします。それが1日に何度かあるのです。和気藹々としたムードになりますし、これが同僚との一体感が生まれる瞬間です。

-目には見えないけれど、組織で働くことの誇りなどが組織をつないでいきますね。隣のチームや社員が何をしているか、文書などで報告を受けていては難しいですが、肌で感じながらのほうが、助け合ったり声をかけたり、タイミングよくできそうですね。

仲教授:場にいるだけでコミュニケーションが取れるのです。実は、オフィス内のコミュニケーションはワーカー同士だけではありません。組織のトップが描いているビジョンやゴールを発信する手段としても、オフィスは大きな意味を持ちます。オフィスで組織のゴールを可視化できれば、オフィスにいるワーカーに常に発信することができます。こちらの例として、キャンプ用品をつくる(株)スノーピークという会社があります。彼らの本社は東京ではなく新潟県燕市にありますが、キャンプ場がオフィスに隣接しています。社員はキャンプ場で、スノーピークの製品を使って人々が楽しんでいるところを毎日見ながら働くのです。つまり、組織のゴールを常に感じながら働けるということです。
 では、役所のオフィスに求められる役割とは一体何か。それは例えば、住民が楽しんでいるところを見られることや、あるいは職員と住民でひとつになって成功や失敗を経験できる場であることではないでしょうか。言い換えると、何のために、誰のために働くのかということが常に感じられるオフィスであるべきということです。

-それは例えば、オープンであるということでしょうか。

仲教授:そうですね。オープンであるほど、部門の違う職員同士、また職員と住民が多様に交わることのできる機会が増えます。
 もうひとつ重要なことは、オフィスにも余白が必要だということです。隙間時間の重要性と同じくらい、空間にも隙間は必要です。余白を用意しておくことができれば、将来起こりうるアクティビティを吸収できます。ですから庁舎にも、住民と活動する空間を用意していくと良いと思います。設計時は意味づけが難しくて会議室や収納に置き換わってしまいがちかもしませんが、地域の活動を誘発させるためには必要な空間です。
 オフィスに余白を設ける目的は、イノベーションを起こす可能性のあるインタラクションの機会を増やすことなんです。インタラクションの全てがイノベーションにつながるわけではなく、確率で言えば1000回に3回だとか、その程度でしょう。それはつまり、現時点でほとんど起きていないインタラクションを100倍にするくらいの気持ちでオフィスを作らなければならないということです。

-人々が偶発的に集まる場所のことを「マグネットスペース」と呼びますが、例えば民間企業ではカフェコーナーやライブラリを設けることで、偶発的なコミュニケーションを促進しています。また、オープンな空間をつくり、アイディアをすぐに共有できるようにし、その姿が周囲への刺激となるように仕向けることもあります。

仲教授:そういう意味では、ITツールだけでなく、家具がコミュニケーションの活性化を促進する役割を担っているのは明らかです。オフィスの効果は即効性があるものでも、すごく効果があるものでもありません。しかし、従来の働き方のままでは勝ち残れないのは、紛れもない事実です。

(作成/コクヨ)

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